うちの家庭はiDeCoとNISA、どちらが向いている? ~転職を繰り返す夫+扶養内パートの妻のケース~
Aさんは30代後半、大学卒業後から会社員として勤務していますが、これまでに4度転職をしています。奥さまはAさんと同世代で、現在は扶養内でパートをしています。未就学の子どもが1人いて、いずれはマイホームも購入したいと考えています。 Aさんは働くことは好きですが、今の職場で定年まで働くかどうかは未確定で、妻はそういった将来に多少なりとも不安を感じているとのこと。どのように資産形成をしたら良いかアドバイスがほしいそうです。
資産形成で重要なこと
資産形成する上で重要なことは、税金を含めいろいろなコストをできるだけ抑えることです。株式や投資信託などの資産運用で利益が出ると、通常は20.315%の税金(所得税、住民税、特別復興税)が課税されます。 iDeCo(個人型確定拠出年金制度)とNISA(小額投資非課税制度)は運用益に課税されないため、効率的に資産形成ができますので、ぜひとも利用したい制度です(※1、2)。
iDeCoとNISA、転職時の影響
Aさんは過去に4度転職していて、今の会社も定年まで勤めるかは未確定とのことで、奥さまも不安のようです。老後資金をしっかり蓄えるためには、所得減税もあり60歳まで引き出すことができないiDeCoを活用することをお勧めします。 表1:iDeCoと新NISAの転職時の影響
(筆者作成) 表1はiDeCoとNISAの転職時の影響を示しています。NISAは転職による手続きは特に必要ありません。iDeCoは転職により積立限度額が影響するため、転職した場合は勤務先事業所の変更などの手続きが必要となります(※3)。 また、会社に確定拠出年金制度(以後DC制度と表記)がある場合は、iDeCoをDC制度に移換することも可能です。逆にDC制度のある会社からない会社や自営業などに転職した場合は、iDeCoへの移換手続きが必要ですので注意してください。
転職とiDeCoと退職所得控除
iDeCoを一時金として受け取る場合は、退職所得控除の対象です。現在の退職所得控除は20年以上務めると、以下のように控除額が大きく増額されます。 勤続年数が20年以下 = 40万円×勤続年数 勤続年数が20年超 = 800万円 + 70万円×(勤続年数-20年) (1年以下の勤続年数は切り上げ) 通常の退職金に対する退職所得控除は、転職によって勤続年数がリセットされます。例えば、4つの会社にそれぞれ10年間務めた場合、退職所得控除額の合計は40万×10年×4社=1600万円です。 iDeCoは積み立てた期間を勤続年数とみなして退職所得控除を計算します。転職を繰り返す人でもiDeCoを40年間継続して積み立てた場合は、2200万円の退職所得控除となります。転職の頻度に関わらずiDeCoを長期で継続するメリットが大きいことがわかります。 (注:退職一時金とiDeCoで受け取る一時金と退職所得控除は、一定のルールに従って重複期間などを計算します(※4、5))