冬の寒さ、夏の暑さ、亡くなる時、欲求不満解消...ホームレス生活のリアリティー
生理的欲求はどうやって満たしているか
ホームレスは飲料のアルミ缶を拾ってお金を得ているが、大金を稼ぐことはできず、必要最低限の生計を維持するだけだと思う。お腹を満たす以外に、週に1回は銭湯に行ったり、コインランドリーに行って洗濯をしたりする人が多い。 その上で、例えば桂さんは海に行ってサーフィンをしたり、斉藤さんは時々競馬場に行ったりと、個人的な趣味がある人はその活動をしている。これらの趣味を加えると、アルミ缶を拾って稼いだお金では足りないに違いない。風俗店に行って楽しもうとするのは、無謀な夢と言えるだろう。 この「荒川河畔の原住民」ルポを微信(WeChat)で発信して、アメリカにいる読者である友人の1人から、日本のホームレスは生理的欲求をどう満たしているのかと質問された。 彼女は、アメリカのホームレスが図書館でポルノ 雑誌を読んでいるのを見たことがあると教えてくれた。日本人は内気なので、そんなことはしないだろう。それに、日本の図書館にはそのようなエロ本が置かれていないと思う。 でも私は見たことがあるが、多くのホームレスは寝床にエロ本を置いており、過去に使っていた携帯電話に大量の女性のヌード写真を保存している人もいる。これらの鑑賞物は彼らの生理的要求の解決に少しは役立つだろうか。 桂さんと斉藤さんと食事をし、酒を飲んでいたとき、2人の女性観を聞いたことがある。斉藤さんは40歳以上の熟女が好きだと言っている。なぜなら、若い女の子が好きなのは自分ではなくお金だから、だそうだ。桂さんは20歳前後の若い女の子のほうが好きだと言った。彼女たちはあまり物心がついていないが、外見がかわいいからだと話した。 彼ら2人は自分の女性観を大いに話してくれたが、自分の性的ニーズをどのように解決するかという話題は避けた。69歳になった彼らも、生理的にはまだそのニーズがあるかもしれないが、1週間や1カ月苦労して稼いだお金を1、2回の性欲解消に使うのは忍びないことは十分理解できる。 欲望にも優先順位がある。まず自分の衣食住を解決し、生きることが最優先だ。それ以外の欲望については、ポケットの中のお金が許すかどうかを見るしかない。 ある人の妹を名乗る中年の女性が、荒川の森に「兄」を見舞いに来るという話を耳にした。その「兄」は以前、自分の兄弟姉妹について、田舎に住んでいる実の兄が1人いるだけと私に言ったことがある。 ホームレスだって一般の人と同じで、「七情六欲」(人間らしい感情や欲望を意味する中国語)があるのが当然だ。「兄」と「妹」の間に何かあったかどうかは知らないが、何かあったとしても、私は完全に理解している。みんな人間だからね! 日本では仕事が終わったら、ママのいるスナックに行っておしゃべりをしたり、お酒を飲んだり、カラオケを歌ったりするのが好きな人が少なくない。ホームレスになってもこの趣味がなくならない人もいると聞いた。 安いカラオケスナックなら、一度の支払いが3000~4000円ぐらいだ。頑張って空き缶を売って1日6000円稼ぐことができれば、そのうちの半分以上を使って、たまにカラオケスナックに行って楽しむのは、できないことではない。 メディアでは日本は性欲の低い社会になったと言われているが、桂さんと斉藤さんは目に見える事実から、そう思わないそうだ。 毎日荒川の河川敷で生活している彼らは、時折、堤防の斜面や草むらで男女が情事をしている光景を見ることがあるという。使用済みのコンドームがそのまま野原に捨てられていることもあり、それが目に刺ささるような異様な光景となっている。 ※ルポ第10話(11月6日公開予定)に続く 相談窓口「日本いのちの電話」 厚生労働省は悩みを抱えている人に対して相談窓口の利用を呼びかけています。 0570・783・556(10:00~22:00) 0120・783・556(毎日 16:00~21:00、毎月10日 8:00~翌日8:00) [筆者]趙海成(チャオ・ハイチェン) (編集協力:中川弘子)