アギーレジャパンが見せた前後半の変幻戦術
アギーレ体制3試合目にして初勝利を飾ったジャマイカ戦。前半と後半に分けて試合内容を要約すると、クロスを多用した単調な攻撃を繰り返し、オウンゴールでゴールを奪った前半と、コンビネーションによって相手の守備を何度も崩しながら、あと一歩のところでゴールが奪えなかった後半、ということになる。 日本のシュート数は前半が9本で後半が11本。決定機の数となると、2本から6本に増え、ボール支配率は50パーセントから53.4パーセントに上がっている。 尻上がりに調子を上げていった日本代表は、武藤嘉紀が際どいミドルシュートやDFの裏への飛び出しでゴールに迫れば、香川真司も前半とは打って変わってボールに絡み、本田圭佑や長友佑都とのパス交換でチャンスを演出した。 「結果が内容を表していないゲームだった。点差を付けるチャンスがはっきりしたものだけで4つあった」とアギーレ監督は嘆いたが、たしかに大差を付けて勝利できるゲームだった。 ただし、ジャマイカはシェーファー監督もしきりに強調していたように、20時間ものフライトを経て来日している。選手のコンディションは万全でなく、時間の経過とともに疲労で足が止まっていったから、日本が後半、押し込めたのも当然のこと。相手がまだ元気な前半から、後半のような攻撃を見せなければならない――そんな指摘もあるだろう。 もし、これがザックジャパンだったなら、そうした指摘は間違っていない。主導権を握り、攻撃的なスタイルでゲームを進めていくことを理想に掲げていたからだ。 しかし、同じような見方で、アギーレジャパンを評価するわけにはいかない。ゲームプランがまるで異なっているからだ。 前半は、敢えて、リスクを犯さないようにしていたのだとしたら? 低調に見えた前半をどう捉えるか――。それによって、アギーレジャパンの評価は大きく変わってくる。 3試合目にして初めて希望するセンターフォワードで先発した岡崎慎司は試合後、これまでの4年間の戦い方を引き合いに出しながら、アギーレジャパンの狙いについて語った。 「相手も前からプレッシャーを掛けてきていた。そういうとき、今までだったらそれでもパスを回そうとしていたけれど、今はそうではなく、シンプルに相手の嫌なところを突いていく。『ここでミスしたらやられる』っていうのを感じたら、ロングボールをサイドに入れたり、単純なボールで相手の嫌なところを突いたりして、自分たちが優位に立ってパスを回せるようになるまで我慢して、リスクを犯さないようにしている。そこが今までと違うところです」