トラックドライバーが「不人気職種」であるワケ…60~70代が荷物を届ける「物流崩壊」の未来
ドライバーが「不人気職種」である理由
構造的な要因とは別に、ドライバーが不足する直接的な理由もある。 人口減少によってなり手の絶対数が少なくなってきていることもあるが、募集しても集まらないのだ。国交省の資料によれば、貨物自動車運転手の有効求人倍率(2021年4月)は1.89で、全職業の0.95のおよそ2倍となっている。要するに“不人気職種”なのだ。 “不人気職種”になったのは、待遇や労働環境が悪いからだ。全日本トラック協会によれば、2021年の年間所得は全産業平均が489万円なのに対し、大型トラックのドライバーは463万円、中小型トラックドライバーは431万円である。しかも待ち時間が多いこともあって労働時間が長くなりがちだ。 2021年の場合、大型トラックが2544時間、中小型は2484時間となっており、全産業平均の2112時間を大きく上回っている。仕事量に対して十分な人数を確保できないので、ドライバー1人あたりが扱う荷物数は増えていく。そこに「待ち時間」の長さも加わって給与に見合わない激務を強いられることになるのである。 女性の就業者が少ないことも、人手不足を加速させている。2020年の女性ドライバーの割合は3.6%と極端に低い。長距離走行や重い荷物を運ぶ「体力的にきつい仕事」というイメージが敬遠材料となっているものと見られる。 思うように新人が入ってこないと、就業者の高齢化が進む。全日本トラック協会は、2021年に道路貨物運送業(トラック運送業と宅配便業)で働いた人の年齢を紹介しているが、30~40代が43.2%で、20代は9.0%と1割に満たない。一方、50代が27.6%、60代以上も17.6%を占めている。 このように、日本の物流は中高年が何とかやり繰りしながら成り立たせているのである。このままなら、老後の生活資金を得るために働き続ける60代後半~70代がドライバーのメイン層となる日も近いかもしれない。 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)