【山口智子さん・インタビュー/前編】旅の魅力は「出会いと発見、そして浄化作用」と、山口智子さん
山口智子さんが、『ツーリズムEXPOジャパン2024』のスペシャル・サポーターに就任。 旅が大好きで、30代後半から興味の赴くまま世界50ヵ国以上を旅してきた。 旅する中で感じたこと、旅が教えてくれたこと、そして旅を楽しむ秘訣などなど、彼女の言葉は、人生という旅にも通じる深い言葉ばかり! 旅は、今年還暦を迎える山口さんがますます元気になれる、活力源でもあった。
旅が教えてくれるもの
彼女の肩書きは、「旅人」かもしれない。30代後半から「もっと世界を知りたい!」と思い立ち、行く先々で民族音楽や未知の文化を追い続け、世界各国を訪ね歩いてきた。 「無我夢中でドラマの仕事を続けて30歳になった頃、ちょっと心の余裕ができた時、無性に世界を知りたくて旅に出まくりました。 特に海外の美術や文化を探るドキュメンタリーの仕事を意欲的に受けて、ゴッホやドガやロダンの人物像を探りにフランスを訪れたり…。 『印象派』というと政治の派閥みたいで、大の苦手分野でしたが、西洋の画家たちの人生を探るうちに、彼らがこぞって憧れて追いかけていたものが、北斎や広重の浮世絵など、日本文化であったことがだんだん見えてきました。異国の地に立ってやっと、故郷日本の素晴らしさに気づくことができた。 日本の陶器がヨーロッパに輸出された時、包み紙としてゴミ同然に扱われていた浮世絵の価値を、西欧の人々が見出してくれました。自然と共に生きる日本人の精神や、職人たちの高度な手わざが世界を魅了した。その東西の行き交いの歴史が面白い。 それから、浮世絵の摺師や彫り師を訪ねたり、美しい形で勝負する潔い職人精神を学びたくて、日本各地を訪ね歩きました。 職人さんたちは、ものづくりへの情熱に溢れていて、お話がめちゃくちゃ面白い! 日本人としての自分にも、ちょっと自信が持てるようになりました」
「言い訳の効かない『形』の美で勝負する職人精神を学ぶうちに、私もエンターテインメント界に属する人間として、未来に誇れる職人仕事をしたいと思うようになりました。 そこで追いかけ始めたのが、世界の音楽文化です。音楽も『もの』と同じく、心から発せられた美しい音には、嘘や偽りがないものだから」 『LISTEN.』というプロジェクトを立ちあげ、生きる力となる、世界の音楽文化を映像ライブラリーに収めながら世界中を駆け巡ってきた。 40代から50代、好奇心の赴くままに、世界を知るための旅に没頭する日々だった。 そして2024年の今年還暦を迎える彼女が今、旅先に選んでいるのは日本国内のあちらこちら。 「修学旅行で退屈だった記憶を、大人になった今こそ覆えそう!(笑)と、旅の始まりの地として奈良を選びました。予期せぬ出会いや未知の感動がいっぱいで、素晴らしい奈良再発見の旅でした。大人になってからの学びの旅は、最高に楽しい!」 旅に出るということは、それまで自分が抱いてきた既成概念や思い込みを、そして自分を取り囲んでいた枠を、いったんキレイに捨て去ることかもしれない。 「旅は身も心も『浄化』してくれます。日常から離れてちょっと距離を置くことで、見慣れた日々の暮らしに潜む魅力に気づくことができる。 一方向からものを見るのではなくて、さまざまな角度から見ることで、大嫌いと思い込んでいたものが、突如大好きなものに大転換する面白さ。『こうであらねばならない』と決めつけていた自分の尺度が、なんてちっぽけなものだったのかと気づくことができる。 旅は、自分にとって何が一番大切か、心に問いかけて発見するチャンスです」