撤去費用「200万~300万円」は近隣者が持ち出し…所有者不明の「ゴミ屋敷」排除で申立人が払う"予納金と実費"
■民法改正で新制度が創設! 国や自治体を動かすとっておきの方法 ある土地に立つ建物の壁に大きなひびや損壊個所があったりゴミが不法投棄されているのを、居住者や所有者が何もせず放置しているせいで、隣地のほうに壁が倒壊する、ゴミの山が崩れる、悪臭や害虫、害獣が近隣住民に健康被害を及ぼすなどの恐れが生じた場合、どう対処すればよいのでしょうか。 【図表】行政による撤去までの5つの段階 2015年11月、ゴミ屋敷のゴミを撤去するため、京都市が条例に基づいて行った行政代執行がメディアでも大々的に報じられました。行政代執行とは、法律や行政処分で命じられたことを義務者が行わないとき、代わりに行政が行う制度です。ゴミ屋敷のゴミの強制撤去では全国初となったこのケースでは、膨大な量の新聞・雑誌などを、前年に施行されたごみ屋敷条例に基づいて京都市が撤去。その費用を居住者の50代男性に請求しました。 このように、現在はゴミを強制的に処分できる条例を定めている自治体があります。中には建物自体を撤去できる条例を定めている自治体もあります。今、住んでいる自治体にそういう条例があるか否かを、自治体名とゴミ屋敷・行政代執行などのキーワードで検索して確認してみてください。行政によるゴミの強制撤去に至るまでには、次の5つの段階があります。 ①隣住民らの申請によって、自治体が実態を調査する(対象となるゴミは建物の外。建物の中の分も対象とする場合は別件として申請)。②自治体から居住者・所有者へ指導・勧告を行う。③勧告に従わない場合、指導・勧告に従わなかったことを公表する。④それでも従わなければ、自治体は改善命令を出す。⑤それにも従わない場合は、ゴミ撤去=行政代執行を行う。 もっとも、実地では指導・勧告が少なくて30回、多い場合は100回行っています。都合5~6年はかかります。前述の京都の件では、住民の相談を受けてから支援・指導のため、市職員がこの男性宅を124回訪問。撤去するまでに約6年を費やしています。