撤去費用「200万~300万円」は近隣者が持ち出し…所有者不明の「ゴミ屋敷」排除で申立人が払う"予納金と実費"
■空き家でもゴミ撤去が可能に では、ゴミ屋敷が空き家で、登記簿や家系図を調べても現在の所有者がわからないときはどうするのでしょうか。この場合は管轄の地方裁判所に対し、管理不全土地管理命令の申し立てを行います。文字通り、裁判所に「管理の行き届いていないこの土地を、ちゃんと管理しなさい」という命令を出してもらうのです。 これが可能になったのは、23年4月に施行された改正民法で、新たに管理不全土地・建物管理制度が創設されたからです(民法264条-9~14)。申立人になれるのは利害関係者、つまり被害を受ける恐れのある隣地の人たちなどです。申し立てる際には、事前に自治体にいろいろ働きかけ、「でもダメだった、我々は手を尽くした」と裁判所に主張できるようにしておくことが大切です。 申し立てを受けた地裁はまず管理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士など)を選任するのですが、その管理人の報酬や管理のための費用を、申立人が前もって予納金として納めなければなりません。しかし、本来それを負担すべき土地所有者は所在不明ですから、結局は申立人の持ち出しとなる公算が大きくなります。 ■1人では難しい費用負担も、近隣で協力し合う まだ事例の蓄積が少ないので、その金額の相場は明確ではありませんが、その場のゴミや雑草、虫や動物をまとめて排除するわけですから、200万~300万円程度かかる場合もあります。 小さくない負担なので、1人では難しそうですね。1人で申し立てても、裁判所から「あなた以外の周辺の住人はどう感じているか」を必ず聞かれますから、近隣全員で話し合い、協力し合うほうがいいと思います。 今後、もしかしたらクラウドファンディングなどの出番もあるかもしれません。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月29日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 萩生田 彩(はぎうだ・あや) NEXTi 法律会計事務所 代表弁護士 東京都生まれ。2011年明治大学法科大学院法務研究科法務専攻修了、12年弁護士登録。専門分野に中小企業法務、相続、不動産問題、刑事弁護など。著書に『遺産分割実務マニュアル』など。 ----------
NEXTi 法律会計事務所 代表弁護士 萩生田 彩 構成=西川修一