東京藝大・箭内道彦教授に聞く 生成AI時代、広告クリエーターはどう受け止める?
漫画家やイラストレーターに長年にわたって愛用されている画材・コピック。このコピックを製造するトゥーマーカープロダクツが、「コピックアワード」という作品コンテストを2017年から開いている。毎年国内だけでなく、海外からも多数の応募がある。 【写真を見る】箭内道彦教授の経歴 主にアマチュアを対象にした賞で、デジタル作画や生成AIによる描画が進む時代に、コピックを用いた手描きイラストの魅力を発信する狙いだ。7回目となる今回は、世界各国から3600点以上の作品の応募を集めた。コピックは手描きイラストを象徴するツールとして、世界70カ国以上で販売し続けている 。 審査委員は漫画家やイラストレーター、デザイナーや東京藝術大学の教授など、イラスト界のさまざまな人材が毎年入れ替わりで担当する。2024年のコピックアワードの審査委員の一人が、クリエイティブディレクターで東京藝術大学教授の箭内(やない)道彦さんだ。 箭内教授は1990年に東京藝大を卒業後、博報堂に入社。2003年に独立し、タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、資生堂「uno」、リクルート「ゼクシィ」、サントリー「ほろよい」などの広告キャンペーンを手掛けてきた広告クリエイターの第一人者だ。 コピックの魅力とは何か。生成AI時代で、人が手で描くイラストはどのように変わっていくのか。箭内(やない)道彦・東京藝大教授に聞いた。
生成AI時代、どう受け止める?
――箭内教授のコピックとの出会いはいつだったのでしょうか。 コピックが登場したのは1987年。僕が三浪して東京藝大に入った後、2年生の頃です。当時「こういうのが出た」と早速購入した同級生がいたのを覚えています。僕はそれを横から見守っていた形でした。 僕はデザイン科だったのですが、同じデザイン科でも、平面系と、立体系に大きく分かれていました。僕は平面系のグラフィックだったのですが、コピックをいち早く取り入れていた学生たちは、カーデザイナー志望や、家電メーカーに入りたいといった、いわば「プロダクト志望の理系的な学生」が多かったのが印象的でした。 僕がコピックを仕事で使う機会は、その後もありませんでした。しかし、Tooの画材自体は前身の「いづみや」の時からずっと愛用し続けています。いづみやは大正時代から続く、伝統ある画材専門店なのですが、その老舗がコピックという新しい画材を生み出したことは衝撃的でしたね。 ――コピックアワードの審査委員を引き受けた経緯は。 昨年度のコピックアワード2022、2023の審査員を担当した同じ東京藝術大学の押元教授から「次は箭内先生お願いします」と内々に言われていました。つまり大学の業務の一環として引き受けたつもりだったのですが、いざ審査をしてみると、それを横に置いて、非常に面白い体験ができました。 応募してきた絵を見ていると、どの絵も「好きで描いている」のだという作り手のパッションが伝わってきます。これは審査していて非常に楽しい経験でしたね。他の審査員の方々の視点もとても新鮮でした。