21人死亡のダニ媒介ウイルスは、どれほど危険なのか?
マダニが媒介して人に感染するウイルスが、日本全国に広がっている。厚生労働省によると、北海道から九州まで、少なくとも30道府県でウイルスを確認。これまで国内で21人が死亡している。春も近づき、野山に出かける機会の増える人には気になる情報だ。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスと呼ばれるが、日本では昨年の1月に初めて感染者が見つかったばかり。それだけに、一般にはなじみが少ない。ウイルスの特徴や危険性をまとめた。 同省結核感染症課などによると、SFTSは主にマダニが媒介する感染症。2011年に中国の研究者らが発表し、初めて知られるようになった。日本では、2013年1月に初めて感染者を確認。このウイルスに感染すると、発熱や下痢、嘔吐、腹痛などの症状が表れる。さらには、頭痛、筋肉痛のほか、意識障害や失語などの神経症状などを引き起こすこともある。感染から発症するまで、6日~2週間の潜伏期間がある。 では、このウイルスにかかると、どれほど危険なのか?中国のデータでは、致死率は6.3~30%と幅が広く、実はよく分かっていない。というのも、まだ新しいウイルスなので、調査事例の数そのものが少ないため、統計にばらつきが出るのだという。 日本の場合、これまで感染が確認された人の数は53人。そのうち21人が亡くなっているだけに、つい身構えてしまう。ただ、同省の担当者は「症状の重い方の感染だけが確認されていて、表面化していない感染がけっこうあるのでは。なので、致死率が53分の21というほど、高くはないでしょう」と説明する。 しかも、21人の死亡者も、この1年で発生したものではない。過去に「原因不明」のウイルスで亡くなった人の検体は保存されており、2011年にこのウイルスの存在が認められてから、過去にさかのぼって調べて判明したものも含まれている。すると、日本でのSFTSウイルスによる死亡は、2005年から起きていたことが分かった。つまり、21人の死亡者は、過去10年の数字ということになる。なので、最近、急に危険性が高まったというわけではなさそうだ。