《奥深いヘビの世界へようこそ》世界の4100種を“ざっくり分類”で解説 食べ物の好き嫌い、糞をため込む小太りヘビ、頸の後ろのフードを広げるコブラは少数派
クサリヘビの仲間 代表格はマムシ、ハブ。鋭い牙と毒が特徴
クサリヘビ科は「マムシ亜科」と「クサリヘビ亜科」に大別される。 マムシ亜科の最大の特徴は、鼻と眼の間にある凹み「ピット器官」を備えていることである。ピット器官は熱や赤外線を探知する器官で、餌や天敵となる動物の体表の熱を相手に接触することなく探知する。人間がたき火に手をかざして熱を感じるようなイメージだが、我々の手(皮膚)の感度をはるかに上回るので、ピット器官を有するヘビは餌や天敵の位置を素早く正確に把握できる。一方、クサリヘビ亜科にはピット器官がない。 クサリヘビ科は、すべてが毒と長い毒牙を持ち、餌の捕獲や天敵からの防御に毒を使用する。ネズミのような動物は鋭い歯を持つため、ヘビは捕食する際に反撃を受けるリスクを伴う。そこで毒でネズミを殺したり、弱体化させたりして安全に呑み込むのだ。天敵に対しては、相手を死に至らしめることができなくても、敵の攻撃力や攻撃意欲を減退させる効果がある。 クサリヘビ科の毒牙は、口を閉じている状態では後ろ側(喉側)に倒れており、開口すると同時に直立する。ハブやガラガラヘビのように数cmもの長い牙を持つ種の場合、閉口時に倒れないと下あごを突き抜けてしまうため、そうした構造になっている。直立した毒牙は獲物に一瞬で打ち込まれ、相手の運動能力を奪う。 クサリヘビ科は、(ヘビ界の中では)小太り体型が多い。この体型のヘビは、餌を積極的に追いかけることは少なく、「待ち伏せ」を得意とするハンターだ。ネズミなどの通り道に潜んで、最小限のエネルギーで捕食するのである。 小太り体型のヘビは「糞」を体内にため込む種が多い。というのも、餌となる動物に飛びかかる際に、体が前のめりになって狙いを外してしまうことがあるが、糞をため込むと下半身にオモリがついている状態になり、攻撃姿勢が安定するのだ。積極的に餌を追いかける種の場合は行動の邪魔になるので、糞をため込むことはない。 ナミヘビ科に比べると“少数派”ながら、クサリヘビ科にはよく知られた種が多い。日本ではマムシやハブ、海外ではガボンアダー、ブッシュマスター、ガラガラヘビなど。「牙」と「毒」が特徴であるがゆえに、名前を聞くことが多いのだろう。