ミドル1人だけ…「恩がある」一度引退した久光スプリングスの「28歳大学生」が期間限定で奮闘中【V・サマーリーグ西部大会】
バレーボール女子のV・サマーリーグ西部大会2日目は29日、熊本市の熊本県立総合体育館で予選グループ戦を行い、Vリーグ女子1部(V1)の久光スプリングスは、同じV1のJTマーヴェラスにセットカウント1―2(27―25、22―25、20―22)で競り負けた。V2のフォレストリーヴズ熊本には同2―0(25―19、25―18)でストレート勝ちした。サマーリーグは若手の強化育成を目的に開催され、西部大会にはVリーグ勢(V1、V2、V3)や西日本大学選抜など13チームが参加。予選グループ戦で2勝2敗だった久光は、最終日の30日に行われる順位決定トーナメントで7位決定戦に臨む。なお、今大会は基本的に2023~24年シーズンのチーム名表記で実施。 ■【写真】2人でポーズを取る万代真奈美(右)と金森晴香 久光のスターティングメンバー(第1セット)はJT戦、熊本戦ともに中島咲愛(25)、北窓絢音(19)、万代真奈美(26)、吉武美佳(21)、平山詩嫣(23)、金森晴香(28)の布陣。リベロはJT戦が西村弥菜美(24)、熊本戦は高橋葵(18)で臨んだ。
マンちゃんのためにも勝ちたかった
V1でしのぎを削るJTとの対決は息詰まる熱戦となった。15点先取の最終第3セットをジュースの末に落とすと、今大会キャプテンを務める万代は目をタオルで覆って涙を流した。その姿に優しい視線を送っていたのが金森だった。「チームをまとめようと、頑張っているマンちゃん(万代の愛称)のためにも勝ちたかった」。背番号「9」の肩にそっと手を置いた。 金森は北九州高(福岡)を卒業後の15年に久光製薬(現久光)入りし、2020年秋にユニホームを脱ぐまで、スプリングスで過ごした。「もともと股関節の形状が良くなくて、体を休めることが必要な状態が続いて…第一線でやるのは厳しいね、となって大学に進学しました」。学生として九州共立大に通う一方で、同大学女子バレーボール部のコーチも務めている。
「単位も全部取っているので(笑)」
そんな金森に古巣から「SOS」の連絡が入った。サマーリーグに臨むにあたり、ミドルブロッカーが手薄なため、出場してほしいとの依頼だった。女子日本代表の荒木彩花(22)と渡邊彩(33)に加え、ベテランの大竹里歩(30)と年代別日本代表に招集されている井上未唯奈(18)が不在。平山1人という現状に「恩があるチームですし、自分ができることがあればと思いました。今、大学4年生で、単位も全部取っているので(笑)」。二つ返事で引き受けた。 大学入学後の2年間はほとんど体を動かしていなかった。「休めたことでコンディションが良くなったのかもしれません。昨年も福岡代表で国体九州ブロックの試合に出ましたから」。今回、久光の練習には10日間ほど参加。ふたを開ければ、ブランクを感じさせない動きを披露した。JT戦も要所でのブロックポイントやサービスエースに加え、浮き球を空いたエリアへ的確に落とすなど冷静なプレーが目立った。「普段は指導者なので、いい意味で視野を広く持てるようになった気がします」。自身の引退後、久光に入団してきた選手も多い。時間の流れの早さを実感しつつも、新鮮な気持ちでバレーボールと向き合っている。 30日は大会最終日。試合会場の熊本は、大学のある福岡の隣県だ。ひょっとしたら、九共大の部員も応援に駆け付けるかもしれない。「見られるのはイヤなので、練習をしろ! と言っていますから、来ることはないと思いますよ(笑)」。背番号「21」のユニホーム姿が似合う28歳は、少しだけ照れた。 (西口憲一)
西日本新聞社