株価も推理、三菱地所で必勝 山村美沙 株は人任せだと失敗する 中山あい子
第2次世界大戦後の第1次株ブーム以降、女性も投資家として名を連ねるようになりました。女性投資家たちの多くは俳優や飲食店経営者、作家など羽振りのよい職業が多かったようです。 今回は執筆活動とともに、株式投資にも夢中になった作家、山村美紗と中山あい子の投資家人生を市場経済研究所の鍋島高明さんが解説します。
「過去にはこだわらない」株も男も同じ 山村美沙
女性投資家には作家が多い。佐藤愛子を筆頭に山村美紗、中山あい子が特に名を知られている。古くは樋口一葉も投機心は盛んであった。『私は女相場師一逆風に活路あり』の著者、高埜ヨシ子もなかなか筆がたつ。 さて、「日本のアガサ・クリスティ」と称された山村美紗は1957(昭和32)年、日本経済の高度成長期の突端で株式投資を始めた。京都府立大を卒業、中学校の国語の教師をしているころだ。著書『株の推理教室-女は金儲けが得意』に書いている。 「大学を卒業後、2年近くかかってためた10万円を持って証券会社に飛び込み、株を始めた。幸い、昭和30年代は株のいい時代だったので、何年かで数百万円もうけ、それで3階建てのアパートのオーナーになりました」 初めて買ったのは三菱地所で以来、山村には験(げん)のいい株となり、折に触れ、三菱地所を買うが損をしたことはないそうだ。投資家には数多くの銘柄に手を出すタイプと少数の銘柄に絞って張るタイプがある。直木賞作家の石田衣良は新日鉄1本に絞って、徹底的に新日鉄のくせを研究したらしい。株主優待券目当てに多数銘柄に投資するより特定銘柄に絞って、終始その株をにらんでいると、波動のくせが分かるという。 山村は子供が生まれると東海観光を買う。みるみる値上がりして入院費用はもちろん知人や親類への内祝いをしても余ったというから運の強い人である。山村は業界のトップ銘柄を対象に長期投資で臨む。株式道の中に人生そのものを見つけ、こう語っている。 「私は過去の株のことは全然考えません。これは男と同じです。過去の男にこだわるような性格の人は、新しい恋愛もなかなかできませんし、同様に株をやっても、もうからんじゃないでしょうかね。その時その時で精一杯燃焼、将来を見つめて最善の努力をすることです」