最強にして最高の相棒…イバを誰よりも知るアラ 「状況に応じて野球を変えられる人」重圧察するも「僕は楽しみ」
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って・侍ジャパン編 アラが投げた72キロを、捕手役を買って出たイバが受け止めた。この日の始球式は荒木雅博さんだった。 ◆球史に残る二遊間『アライバ』荒木雅博と井端弘和【写真】 「グラウンドで井端さんに会うのは久しぶり。長年、二遊間を組んできましたから懐かしい感じがしましたね」 チームへの差し入れは、そろって苦手なくせにエビ入りのカレーパン。だから井端監督には「疲れているだろうし、甘い物を」と生チョコを手渡した。目を見ればわかる。いや、見なくてもわかる。それがコンビというものだ。 吐き気を催すような侍の重圧は、荒木さんも知っている。2008年の北京五輪に出場。前年の予選とは全く異質の緊張感に包まれた。 「あの星野(仙一監督)さんが硬くなっているのわかりましたから。僕ももちろん。半端なかったです」 オールプロで臨みながら予選リーグは4位通過、決勝トーナメントでも連敗してメダルを逃した。勝てば空港で待っていたはずの国民からの称賛は、あの落球への落胆や、采配への批判にすり替わっていた。 「僕個人は経験して良かったと思っているし、ホームランを打つこともできました。でも欲しかったのはメダルなんですよ。お金では買えない。ユニホームもホームランボールも手元にありませんが、メダルがあれば絶対に飾っていると思いますもん」 億を稼ぐプロ選手が目の色を変え、一投一打に一喜一憂する。それが国際大会。選手ですら重圧がのしかかる。監督はそれ以上だと荒木さんは知っている。 「だって(昨秋の)井端さん、痩せてましたもん。あの時の星野さんが感じていたプレッシャーを、今は井端さんが感じている。すごいこと、大変なことです。でもね、僕が知ってる井端さんはメンバーによって、状況に応じて野球を変えられる人です。去年と今回、そして(2年後の)WBC。どんな人選でどんな戦いをするのかが、僕は楽しみ。しっかり応援しようと思います」 変幻自在で奥深い。そんな井端野球を誰よりも知る男。最強にして最高の相棒である。
中日スポーツ