中村憲剛×山根視来スペシャル対談。バルサ育ちのリキ・プッチの凄みから、MLSの可能性まで。日本人選手のアメリカ挑戦は増えるのか?
「引退試合でリベンジを」(山根)
――締めとしてケンゴさんから見た山根選手の魅力を改めてお願いします。 中村 ミキの魅力は何より群を抜くハングリーさだと思います。あとは自分で、今できていることとできていないことをちゃんと分析できるし、どうすれば良いかを周囲に訊ける素直さがある。自分で考えて正しく努力できる選手だから、成長する要素を、すべて兼ね備えているんですよ。最初はえ?っていうミスを連発してる姿を見てたから「どうしよう。大丈夫かな」と思ったけど(笑)、それは冗談として、その差を自分でしっかり埋めていける。ギラつきを常に持っているから成長スピードも人より速い。 成長したい!という欲求でギラギラさせていたので、俺もダメなところはダメとアドバイスを言いやすかった。だからやっぱり飲み込みが速い。飽くなき向上心。これは上に行く選手の大事な要素。どの選手もそれは持っているんだけど、どこかでプライドが高かったり、自分のダメなところを受け入れられないところがあるけど、ミキはそこが本当に違う。そして今はMLSで色んなことを吸収しているから、正直、もう俺の範疇では測れない選手になっていると思います。 山根 ありがとうございます。そんな褒めていただいて。でもケンゴさん、フロンターレから移籍する時にも色んな方からメッセージをいただきましたが、みんな褒めてくれるのは、僕の技術力ではなく姿勢なんです(笑)。 中村 技術も身についた!! それもちゃんと伝えておきます(笑)。でも姿勢は大事だよ。姿勢が8割って言っても良いくらい。だからミキはやっぱり素晴らしい。ここからどうキャリアを積んでいくのか楽しみだよ。MLSの経験を日本サッカーに還元してほしいしね。 ――では、改めて山根選手から見たケンゴさんはどんな存在でしょう? 山根 冒頭でも話しましたが、実質にピッチで一緒にプレーしたのは4か月もないくらいです。でもケンゴさんと長くプレーしている人ほど、その凄さを分かっていて、その理由を4か月で見た印象でした。 練習中も「こうすれば良いんだよ」とアドバイスしつつ、自分でも表現しちゃう。それを40歳のおじさんがやっているという(笑)。 中村 誰がおじさんだよ(笑)!! 山根 でも本当に衝撃的で。ケンゴさんがいた時と、いなくなった時の、存在の大きさも実感しましたね。練習のピリつきだとか、どこまで細部にこだわるのかというのを、体現してくれていた。そして引退してから、ちょくちょくグラウンドに顔を出してくれた時に、だいぶ悩みを打ち明けさせてもらっていたので、その時のほうが話す時間は長かったと思います。 それこそ(2022年の)ワールドカップ前とか。代表で自分がパンクしそうな時とかに、いろんな話を訊いてもらっていました。チームと代表のギャップなど。 中村 俺も同じような悩みを抱えていたからね。でも結果的にミキにワールドカップの出場時間は越えられたから(笑)。俺は40分くらいだから(笑)。 山根 僕は60分出ました(笑)。あとイエローカードも(笑)。でも、本当に支えてもらいました。そして心残りはケンゴさんからのパスを受けて、ゴールかアシストを記録できなかったこと。一回だけ、ミニゲームでチャンスがあったんです。でも僕がトラップミスしました(笑)。だから引退試合でリベンジさせてもらいます。 中村 ありがとう。最後にしっかりつなげてくれたな、素晴らしい。じゃあ引退試合楽しみにしているよ!! ――山根選手にとってケンゴさんがひとつの指標になりそうです。 山根 そうですね、ケンゴさんがJリーグでMVPを獲ったのはいくつでしたっけ? 中村 36歳。だからミキもまだまだいけるよ。 山根 そうですね、そして僕も歳を重ねるごとに、上手さを身に付けた器用な選手になっていきたかったのですが、僕は常に全力で走り回るしかないので、歳を重ねてもずっと気合いでやっていきたいです。 中村 そうだね、ぜひ頑張って!! そして俺は指導者としてミキのような選手を育てていきたいと思います。 山根 ありがとうございます!! ■プロフィール 中村憲剛 なかむら・けんご/1980年10月31日、東京都生まれ。川崎一筋、バンディエラとしてのキャリアを築き、2020年シーズン限りで現役を引退。その後はフロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー(FRO)、Jリーグ特任理事など様々な角度からサッカー界に関わり、指導現場で多くを学んでいる。 やまね・みき/1993年12月22日生まれ、神奈川県出身。178㌢・72㌔。あざみ野F.C.―東京Vジュニア―東京VJrユースーウィザス高―桐蔭横浜大―湘南―川崎―ロサンゼルス・ギャラクシー。J1通算196試合・14得点。J2通算37試合・0得点。日本代表通算16試合・2得点。粘り強い守備と“なぜそこに?”という絶妙なポジショニングで相手を惑わし、得点も奪う右SB。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)