ファッション編集者はオワコンなのか? 例えば山下英介という生き方
山下:そうなることを願ってコツコツとやっています。
――僕らは野武士や傭兵のようにファッションメディアに従事している(させてもらっている)が、25年前に比べてキラキラした目でこの業界を見ている若者は確実に減っている。改善策はある?
山下:難しい質問ですね……。それを発見したら、ぜひ教えてください(笑)。
でも、読み応えのある雑誌を自費出版している若者もいるし、「ぼくのおじさん」読者のようにジェネレーションギャップのあるモチーフに興味を示す若者もいます。僕ら年長者は、そうしたひたむきな行動を見守り、時に手助けしてあげられたらと思います。
夢は20代の編集長を育てること
――人生の折り返し地点を迎え、僕も最近よく聞かれることなのだが、“ファッションメディア従事者”としての山下さんのゴールとは?
山下:僕がいなくても「ぼくのおじさん」が継続していくことでしょうか。そのために20代の編集長を育てたいです。紙版も作りたいし、組織も大きくしたいです。夢はたくさんあります!
――最後に、ファッション編集者に必要なものとは?
山下:好奇心だと思います。好きになるということは、それだけで才能。そして、若い方はもっと主観を大事にしてほしいですね。リスクもあるでしょうが、旗色を鮮明にすることでキャラクターが立ちますし、同志も増えるはず。
今後は、ホスピタリティーも必要になるでしょう。読者と向き合って1人1人の満足度を上げる。そのためには、まず読者が見えている必要があります。昔気質の職人技は通用しなくなると思います。僕は好きなんですけど……。
インタビューを終えて
1つの現場に編集者が2人いることはなく、つまり会社の内外を問わず、他者の仕事を見る機会はほぼない。またファッション編集者は、日本にどんなに多く見積もっても1000人といないはずで、非常にユニークな存在だ。同じ就職氷河期を生き抜いた山下さんと話をして、さまざま感じることがあったが、一番の収穫は“もう少しファッションのため、出版のためにがんばってみよう!”と素直に思えたことだ。