ファッション編集者はオワコンなのか? 例えば山下英介という生き方
雑誌と、クライアントである企業・ブランドとの関係も変わってきました。出稿が減って、紙1ページの価値が軽くなりました。一方で、クライアントからの要求は増える。純広告1Pに対してフォロー2Pの“倍返し”状態で、今後いっそうその傾向は強まるでしょう。
判断基準は本質的に良いか?
――華やかな世界にいた山下さんが、今は「ぼくのおじさん」を作っている。
山下:もちろん、それによって離れていった人もいます。でも、全員というわけではないです。そもそも僕自身、ラグジュアリーな生活をしていたわけではないですし。“値段が高いモノ”ではなく、“本質的に良いモノ”に価値を見出している方とは関係が継続しています。逆に、“売れるモノ”を作っている企業・ブランドとは距離があいてきました。
――山下さんを物語るエピソードの1つとして、“自腹でモロッコ・ロケハン事件”がある。
山下:事件って(笑)。僕の中では、いたって普通のことです。モロッコのファッションをはじめとする文化に興味があって、誌面で形にしたかったので自腹で下見に行きました。
――自腹で行った国はほかにもある?
山下:ポルトガルやインドにも飛びましたね。僕は、誌面で紹介する高いスーツも自腹で仕立てています。そうしないと説得力が生まれないんです。でも、それはあくまで自分が楽しむためであって、ある意味で“プレー”というか……。自分が楽しんでいるさまを暗に見せて、読者を誘導する。1980~90年代の雑誌で多くのファッション編集者が実践していたことで、僕はそれにならっているだけです。ただ、誰よりもお金を使っている自信はあります(笑)。
日陰に光を当てる、それがメディアの役目
――山下さんを見ていて“自分と似ているな”と感じるのは、“下手くそな人を応援する姿勢”。勝ち馬には誰でも乗れるが、“一生懸命、だけど日の目を浴びないヒト・コト・モノ”を応援するのがメディアの役割だと思う。