ファッション編集者はオワコンなのか? 例えば山下英介という生き方
山下:本当にそう思います。メディアにはまだその力があるのに、100%活用していないと感じます。
――7、8年ほど前、編集者も多く関わってオウンドメディアブームが起きた。が、いつの間にか沈静化してしまった。
山下:自社のことだから良いことしか書かない、それでは読者に見透かされてしまいます。例えば、80~90年代にビギは自社製品を一切出さない冊子を発行していました。“良い時代”と言ってしまえばそれまでですが、ビギという世界観を好きになってもらうアクションだったと思うんです。そして今、企業・ブランドやメディアにはそれが求められているはず。
――僕もおじさんが好きで、だから「ぼくのおじさん」がスタートした際には“やられた!”と感じ、同時に“このコンセプトでやっていけるのか?”と勝手に心配した。
山下:便宜的に“おじさん”と言っていますが、特に年齢はセグメントしていません。例えば高校生にとって、近所の古着店のアラサーのお兄さんは十分“おじさん”ですよね。それに、今後は女性が出演しても良いと思っています。
――「ぼくのおじさん」の読者層は?
山下:一番大きな“山”は30代で20代、40代と続きます。そして女性率が40%!理由は、まだ分析できていないのですが……。
――ファッション業界の“おじさん”に会うと、皆一様に山下さんを褒める。だから僕はジェラシーを感じている。“おじさん”、そして取材対象者と仲良くなるコツは?
山下:相手を敬い、きちんと向かい合うことでしょうね。例えば高齢の取材対象者の場合、スマホやパソコンを持ってないこともあります。だから「ぼくのおじさん」編集部では、23年にファックスを導入しました(笑)。まぁ、それは一例ですが、相手のために時間を取ることが肝要かと。そこをケチってしまうと何事もうまくいかないです。
――取材対象者をリスペクトしているからこそきちんと下調べし、それが蓄積されて知識・情報となる。結果としてページに深みが生まれ、読者満足度も上がる、という好循環。