ファッション編集者はオワコンなのか? 例えば山下英介という生き方
山下:ファッションや雑誌に興味のある友達もいなくて。インターネットもない時代ですから、唯一の情報源であるファッション誌を片っ端から読みました。それがフリーランスになったときに役立ちました。
――というと?
山下:「GQ ジャパン(GQ JAPAN)」(コンデナスト・ジャパン)だとこう、「メンズ・イーエックス(MEN'S EX)」(世界文化社)だとこう、と各雑誌のテイストに合わせられたんです。
――山下さんのファッション遍歴についても聞きたい。
山下:目覚めは中学生のときですね。“渋カジ”と出合い、バッシュ(バスケットボールシューズ)やエンジニアブーツ、ビンテージに傾倒しました。高校生になると、渋谷・並木橋のセレクトショップ「レディ・ステディ・ゴー!」(15年閉店)でスーツを買って、ベスパに乗るように。飽きっぽい性分なので、すぐ次、次な感じで……(笑)。まったく通っていないのは、ヒップホップくらいかな?このあたりの雑食感も、雑誌を読みあさるのと似ていると思います。
“業務”は“好き”にはかなわない
――時代は下り、ファッション誌やファッション編集者に代わって、SNSやインフルエンサーが台頭してきた。
山下:仕方ないのかなと。だって、雑誌がつまらないですもん。もちろん、自分が作るものは面白いと信じてやってきましたが、“業務”は“好き”にかないません。大手の総合出版社の場合、異動があるので、ファッション好きがファッション誌を作っているとは限りません。そこに熱は発生しづらいし、それどころか商業媒体ですから広告主への忖度も生まれる。これでは好きの結晶であるSNSに太刀打ちできません。
でも、そういったインフルエンサーの知識やノウハウをアシストしたのは雑誌だと思うんです。
ファッション誌の影響力は減少し続けていますが、いまだにパリやミラノで編集長が丁重に扱われている現実もありますよね。僕も小学館のおかげで、そちら側にいられた1人です。