「高すぎる」シンガポール、インフレ低下も「GDP」は大幅増のスゴさ
シンガポールの経済に好調の兆しが表れている。10月の総合インフレ率は1.4%と、9月の2.0%から大幅に低下し、2021年3月以来の低水準を記録。一方、第3四半期のGDP成長率は前年同期比5.4%増と、2021年第4四半期以来の高水準となった。政府は2024年の経済成長率予測を「3.5%前後」に引き上げている。この動きは、不動産価格や賃金にも影響。インフレを抑えながらも、GDP好調を維持するシンガポール経済についてみていこう。 【詳細な図や写真】インフレ抑制と経済成長の両立は非常に難しいテーマだ(Photo/Shutterstock.com)
シンガポール、インフレ減速、GDPは好調
シンガポールの2024年10月の総合インフレ率は1.4%と、9月の2.0%から大幅に低下した。この水準は2021年3月の1.3%以来の低水準であり、CNBCが伝えたロイター通信のエコノミスト調査による予想1.8%をも下回る結果となった。 住宅費と民間交通費を除いたコアインフレ率も、10月は2.1%まで低下。9月の2.8%から大幅に改善し、予想の2.5%も下回った。シンガポール金融当局(MAS:中央銀行に相当)によると、この背景にはサービス価格の上昇率低下に加え、電気・ガス料金、医薬品、衣料品などの価格上昇率が鈍化したことが影響しているという。この傾向は、第4四半期にかけても続く見込みとのこと。 一方、GDP成長率は、2024年第3四半期に前年同期比5.4%増を記録。速報値の4.1%を大きく上回り、2021年第4四半期の6.1%以来の高水準となった。これを受けて政府は2024年の経済成長率予測を「2.0~3.0%」から「3.5%前後」へと上方修正している。 MASの10月の四半期金融政策会合では、シンガポールドル名目実効為替レート(S$NEER)の現行の上昇率を6会合連続で維持することを決定。市場予想通りの結果となった。この決定の背景には、コアインフレ率が7~8月期に2.6%まで低下したこと、そしてGDP成長率が予想以上の伸びを示したことがある。さらに、コアインフレ率の一段の低下が見込まれること、経済成長率が今後数カ月から2025年にかけて潜在成長率に近づくと予想されることも、現行の金融政策維持を支持する要因となった。 シンガポールの金融政策は、他国とは異なりベンチマーク金利ではなく為替レートを通じて物価の安定と健全な成長を目指す、という特徴を持つ。MASは、シンガポールドルの為替レートを主要貿易相手国の通貨に対して管理しており、非公表の政策バンド内で変動させている。具体的には、シンガポールドルの価値を、主要貿易相手国の通貨に対して緩やかに上昇させることで、インフレを抑制する手法だ。 市場では、2025年からの金融緩和サイクル開始を予想する声が出始めている。Focus Economicsによると、ユナイテッド・オーバーシーズ銀行のアナリスト、ジェスター・コー氏は、2025年1月か4月の金融政策会合でS$NEERの傾きを50ベーシスポイント引き下げる可能性を指摘している。 現在の為替レート上昇ペースを緩める(0.5%引き下げる)ことで、金融政策を平常時の水準に戻すことができる。これは、インフレ率が政府目標の水準に落ち着きつつあることを反映した動きとなる。