伊藤忠がいよいよ本気、「アニメ・IPで1000億円」構想の衝撃 「おぱんちゅうさぎ」アジア展開も
■1000億円実現へシナジー深化がカギ ライセンスビジネスとスカパー・ピクチャーズの目標値を合算すれば、伊藤忠がエンタメ・IPビジネスで狙う事業規模は1000億円に上る。この青写真を実現するうえで重要となるのが、Rights & Brands Asiaとスカパー・ピクチャーズのシナジーの深化だ。 スカパー・ピクチャーズにおいて、IPコラボの需要が溢れかえるような作品をプロデュースできれば、Rights & Brands Asiaはコラボ案件の運用・企画力を対外的にアピールできる。IPホルダーからの期待値が高まれば、新たな人気キャラクターの商品化権獲得につながるだけでなく、Rights & Brands Asiaと密接な関係のスカパー・ピクチャーズにヒットの見込みが高い原作も集まりやすくなるわけだ。
ただ、スカパー・ピクチャーズのプロデュースした「チ。」は作品性を高く評価される一方、出版大手の漫画編集者からは「キャラクターグッズがよく売れるタイプの作品ではないだろう」という声も上がる。 現状の製作パイプラインには「商品化の需要が強い作品ばかりが控えているわけではない」(長内社長)ため、前述のシナジーが最大化されるフェーズとは言いがたい。 「商品化を見据えた作品も検討していく」という長内社長。「葬送のフリーレン」など数々の人気アニメを手がけたアニメスタジオ・マッドハウスをアサインできた「チ。」のように、まずは有力なアニメスタジオの制作ラインを押さえつつ、作品性の高い原作ものアニメやオリジナルアニメを投下していく。同時に、Rights & Brands Asiaが海外で独自性のあるコラボ企画を積み重ねることで、出版社などのIPホルダーに運用・企画力を示す、といった我慢の時期が続くだろう。
エンタメ・IPビジネスの成長へ、伊藤忠はグループのリソースを惜しみなく生かす方針だ。 「チ。」の放送・配信が始まった10月には、傘下のファミリーマートの店舗サイネージでメインキャラクター役を務める人気声優・津田健次郎氏のインタビュー動画を放映した。サイネージが設置されている約1万の店舗網で宣伝し、作品の稼働を支援することはもちろん、広告収入拡大を狙うサイネージの視認率も上げてしまおうという伊藤忠ならではの取り組みだ。