伊藤忠がいよいよ本気、「アニメ・IPで1000億円」構想の衝撃 「おぱんちゅうさぎ」アジア展開も
ネットフリックスやアマゾンといった動画配信サービスのプレーヤーに需要を食われてきたスカパー。ここ数年は事業改革に向けて、スカパー以外のプラットフォームでも視聴され、世界で戦える強力なアニメ作品の製作を模索してきた。 合弁会社の設立前に「チ。」のアニメ化の許諾こそ勝ち取れたものの、ヒット見込みが高い原作の多くはソニーグループ傘下のアニプレックスや東宝に許諾が集中する状況が続き、スカパー単独での挑戦に限界を感じつつあった。
そんな中、海外の商流に強みを持つ伊藤忠がIPビジネスに注力し始めたことを知り、スカパー側から協業を打診。スカパーJSATが約8割、伊藤忠が約2割と出資比率ではマイノリティーだが、アニメ製作への関心も大きかった伊藤忠にとっては渡りに船となった。 ■エンタメ・IPビジネスで苦い過去 近年、アニメ・IPビジネスの活況は注目を集めており、ゲーム会社をはじめとしたエンタメ・メディア業界内での事業強化や参入の動きは頻発している。では、伊藤忠のような畑違いのプレーヤーでここまで入れ込むケースがあるかというと、一転して珍しい事例だろう。
実は伊藤忠、この領域でまったくの門外漢というわけでもない。1998年に「君の名は。」などで知られるアニメ会社、コミックス・ウェーブ・フィルムの前身となった企業を合弁で設立し、「仮面ライダー」や「サイボーグ009」で知られる石森プロのライツビジネスも担ってきた。 しかし、2000年代初頭に積極化した映画の製作委員会への出資については、映像を世界展開するというハードルの高さから、投資回収のリスクを鑑みて中断するなど、エンタメ・IPビジネスでスケールしきれなかった苦い過去を持つ。
それから時は流れ、2010年代後半には動画配信サービスの世界的な普及によって、エンタメ・IPビジネスに強力な追い風が吹き始めた。これを受けて、2020年4月にはVTuber企業のANYCOLORに出資するなど、伊藤忠でもIP事業が再加速する。 2021年、満を持して伊藤忠は現地企業などと合弁で、香港にアニメやキャラクターのライセンス代理店・Rights & Brands Asiaを設立(伊藤忠は38.5%出資)。中国市場における「ムーミン」の独占展開を開始し、小売りや飲食、観光業など100件程度の顧客を開拓した。