韓国が戒厳令、尹大統領「野党が反国家行為」…戒厳軍が国会に入る
【ソウル=小池和樹】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は3日夜、緊急談話を出し、政党活動の禁止や報道機関の活動を制限する「戒厳令」を宣言した。野党が政府高官の弾劾(だんがい)訴追案を提出したり予算案の削減を求めたりしていることを理由に挙げ、「憲政秩序を踏みにじる明白な反国家行為」だとした。韓国では反対する市民が国会前に集まるなど混乱が広がっている。 【写真】尹大統領の発言をテレビで見る国民(ソウルで、3日)
反国家勢力の脅威から自由民主主義と国民を守るためとして、戒厳司令官が布告した3日午後11時時点の「戒厳司令部布告令(第1号)」によると、議会や政党など一切の政治活動の禁止や、すべての報道と出版の統制、集会行為の禁止といった措置が示され、違反者に対しては令状なしに逮捕、拘禁、押収捜索ができ、処罰するなどとした。
ソウルの大統領府で緊急の特別談話を発表した尹氏は、国会で過半数を握る最大野党「共に民主党」などが政府高官や検事らの弾劾訴追案提出を繰り返し、治安に関する内容を含めた予算案の削減を求めているとして、「国政がまひ状態にある」と指摘した。
その上で、国会が「犯罪者集団の巣窟となり、国家の司法・行政システムをまひさせ、自由民主主義体制の転覆を企てている。国会が自由民主主義体制を崩壊させる怪物になった」と主張。今回の戒厳令の目的について「北朝鮮に従う勢力を撲滅し、自由憲政秩序を守る」とした。
国民に向けては「善良な国民に多少の不便はあるが、不便を最小限に抑えることに力を注ぐ」とした上で、「自由な韓国の永続性のためにやむを得ず行うものであり、国際社会で責任と貢献を果たす対外政策に変わりはない」と理解を求めた。
韓国のニュース専門テレビYTNによると、4日未明、戒厳軍の一部が韓国国会に入った。
◆韓国の戒厳令=韓国憲法は第77条で、大統領は、戦時などの国家緊急事態や公共の安寧秩序を維持する必要がある場合に、戒厳令を宣布することができると定めている。戒厳令が宣布された際は、法律が定めるところにより、言論・出版・集会・結社の自由などに関する特別な措置をとることができるとしている。