世界を唸らせた盆栽プロデュース「TRADMAN'S BONSAI」の守破離:小島鉄平
伝統の世界は、破壊や攻撃をもエネルギーにする
通常、盆栽の世界では5年間の住み込み修業が求められる。既存の枠にとらわれないTRADMAN’S BONSAIだが、小島は「オールドスクールがあってのニュースクール」という考えで、自身も“師匠”の元で修業を積んだ。見極めたうえで迎え入れる従業員にも弟子入りを課すが、かつては無給が当たり前だったその期間に、「今の時代それでは文化の担い手は育たない」と最低限の給与を出す。並行して、ギャラリーと呼ぶ活動拠点を年内にも拡張予定で、新しい人材を受け入れる環境も徐々に整えている。 TRADMAN’S BONSAIの事業は、週替わりで異なる盆栽を貸し出すリースと盆栽の販売で構成され、販売に関しては海外からのニーズも大きい。ありがたい話だが、懸念もある。 「人間は生きても100年というなか、盆栽は300年、500年と続きます。神社の御神木レベルの樹木を、目の前に楽しめる。さらにそこには過去の持ち主の創作や意図が残っていて、時を超えた対話ができる。でも、3日水をあげないだけで枯れてしまう」 その価値や希少性に惹かれてか、海外の富裕層は大金を出すが、手にわたったら最後、面倒を見られずに絶えてしまうものもあるという。彼らの資金力には抗えないなか「一定の樹齢以上のものは、海外に出さないという策も必要かもしれない」と小島。 現状TRADMAN’S BONSAIでは、内装や温度管理など“育てられる環境づくり”まで含めて販売するようにしている。ほかにも、京都の瓦職人や墓石の作家、江戸文字のアーティストなど、伝統文化を紡ぐ面々とコラボレーションし、面としての盆栽カルチャーの底上げに取り組んでいる。 TRADMAN’S BONSAIの立ち上げからおよそ10年が経ち、当初はぎこちなかった盆栽業界とも良好な関係を築けている。むしろ、人気が出てきた盆栽の世界に「新規参入が増えてますよ」と、小島が迎える側になった感もある。伝統の世界は、破壊や攻撃をもエネルギーにすると聞く。小島の存在によって、数百年続く盆栽文化の幹は確実に強くなっている。 小島鉄平◎1981年、千葉県生まれ。アパレルのバイヤーから盆栽業界に転身。2015年TRADMAN'SBONSAIを結成(2016年松葉屋を設立)。唯一無二の世界観で「盆栽」のある空間を演出し、国内外さまざまなブランドやアーティストと共演する。
Forbes JAPAN | magazine