世界を唸らせた盆栽プロデュース「TRADMAN'S BONSAI」の守破離:小島鉄平
時代にあった文化の守り方を
「ちょっと気分を変えたくて道端に盆栽をもちだしたんです。そこに仲間がスピーカーをもってきて、いつものように音楽を流しながら盆栽をつくっていたら、いつのまにか人だかりができて。ライブペインティングのような雰囲気のなか、盆栽がどんどん売れたんです」 自分のバックグラウンドであるストリートカルチャーと盆栽の融合は、モノになる。そう確信した瞬間だった。日本に戻り、ファッション・デザインの展示会「rooms」に出展すると、ユナイテッドアローズやビームスなどセレクトショップとの仕事へつながった。 小島の独自性は、特に盆栽の“魅せ方”にある。明かりを落とした部屋に盆栽をおき、ライティングで際立たせる。必要に応じて飾り台も創作する。それは、日本の伝統的な盆栽のあり方とは一線を画す。 例えば、国内最高峰とされる国風盆栽展(通称、国風)。90年以上の歴史をもち、上野の東京都美術館で開催される同展だが、小島はかつて「世界の作家やコレクターが手を尽くした300鉢が並ぶんですが、壁や台など展示の仕方が全然ダメで。『盆栽にも出品者にも失礼じゃないですか』と言ってしまって」、師匠の怒りを買ったことがある。一方で、そのモダンな演出は、日本文化を好む海外エグゼクティブの心を掴み、近年はディオール、リモワ、ポルシェといった世界的なブランドからも引き合いが絶えない。 2023年には盆栽師・小島鉄平として京都の両足院で展覧会「TRADMAN’S BONSAI × LAND ROVER」を開催。伝統的な日本庭園を望む方丈や茶室を舞台に、盆栽によるアートイベントを開催した。同年12月には東京・南青山に「盆栽のある空間」を体験できるギャラリー併設のサロン・松葉屋茶寮を、翌4月には丸の内にフラッグシップストアをオープン。都市の一等地への出店は人気の表れであると同時に、新しい盆栽のあり方にコミットする小島の覚悟にも映る。 ■時代にあった文化の守り方を 盆栽が世界に通用するかっこいい文化であることを「特に日本の若い人に伝えたい」という小島の思いは、少しずつかない始めている。TRADMAN’S BONSAIで働きたいと弟子入りの志望者は100人が順番待ちする状態だ。