窪田正孝の参戦が熱すぎる…玉森裕太”祥平”の成長に心震えたワケ。スペシャルドラマ『グランメゾン東京』 考察レビュー
2人の夢が、また始まる
その後、グランメゾン東京は星を1つ取り戻し、立ち上げの時に世話になった汐瀬智哉(春風亭昇太)の力で銀行からの融資も決まった。 これまでの一連の流れは尾花による壮大な計画で、グランメゾン東京とNEXマネジメントの契約を破棄させるために仕組んだことが明らかになる。メイユール京都もそのために作ったお店であり、グランメゾン東京が復活を遂げた後はすぐさま閉店。尾花は明石にこう語る。 「俺たちの儲けなんてたかがしれてます。でも、お金のためだけにやってるわけじゃないんで。お客様と作る幸せな空間が好きだからやってるんです。一つの皿に、一滴のソースに莫大な手間とコストをかける。普通に考えたら、ほんとバカですよ。でも、それがめちゃくちゃ面白いからやってるんですよね」 とにかく無駄なことが嫌いで、何よりも効率を重視する明石。その態度は、コロナ禍において料理のみならず、演劇やアート、音楽など、あらゆるものが不要不急という言葉で切り捨てられた状況そのものに重なった。 たしかに、それらは命に直結するものではないかもしれない。だけど、尾花の料理を食べた明石が思わず笑みを溢したように、そこには途轍もないパワーがあることを私たちは知っているはずなのだ。そのことを今一度思い出し、料理を通じて幸せを提供してくれている飲食業界の人たちに対するリスペクトが湧き上がってきた。 倫子はグランメゾン東京を若いスタッフたちに託し、尾花とともにフランス料理の本場パリに新店舗を立ち上げるために日本を発つ。窮地の時は「おじさんとおばさんの夢に若い子たちを付き合わせてしまいましたね」と自虐的に語っていた倫子だが、彼女や尾花の姿はきっと、いくつになってもどんな状況からでも夢を描けるのだと多くの人たちに勇気を与えているはずだ。 「世界中の星をかっさらう」という、2人の夢はここからまた始まる。その夢の続きをこれからも私たちに見せてほしい。 【著者プロフィール:苫とり子】 1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
苫とり子