佐渡裕「1万人の第九」への思い 偉大な先輩の総監督回数超えへ
佐渡裕「1万人の第九」への思い 偉大な先輩の総監督回数超えへ THE PAGE大阪
最初は断りました。こんなんやりたくないってハッキリ言ってましたから──。選ばれた1万人の合唱団がベートーヴェンの「第九」を歌う師走恒例の「サントリー1万人の第九」が12月6日、大阪市中央区の大阪城ホールで行われる。その総監督・指揮を務めるのは、今年ウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任した世界的指揮者、佐渡裕さん(54)だ。今回で自身が総監督を務め17回目たが、最初にこの話が来た時は断っていたという。そんな佐渡さんの「一万人の第九」への思いを聞くため、レッスンが行われていた会場を直撃した。
心と体がいきいきしてこそ、いい音に
29日、兵庫県神戸市内のホールを訪ねてみると、客席にいた1000人もの人が一斉に「第九」を歌っていた。舞台を見ると、佐渡さんが両手を広げ指揮をしている。これは「総監督レッスン」と呼ばれるもので、佐渡さんが1万人に合唱指導を行うもので、一斉に指導することはできないため、受講者を入れ替えて何度も行う。また、佐渡さんが舞台から下り、受講者と肩を組んで歌ったり、客席中を歩くなどアットホームな光景から第九を熱心に指導する姿が見られるなど、ホール全体が熱い雰囲気に包まれている。 「クラシック音楽というのは、なかなかその音だけの世界と思われているじゃないですか。演奏する方が音を鳴らすことだけに集中してしまう。人はやっぱ体も生きてますからね。心と体とそれが両方いきいきとしてきてこそ、やっぱりそうしたいい音になっていくような気がする」と話す佐渡さん。 応募総数1万4161人の中から選ばれた1万人だが、これまで約3か月にわたり練習を積み重ねてきた。上は96歳、下は7歳という幅広い年齢層のメンバーでクラシックファンばかりではない。だが「年齢が離れててもこの地球上で同級生なんです。だからそれをもっと実感したかったんです。だからみんなで肩を組んで『12月にいい音楽を作るぞ』という思いです。音楽自体もそういう音楽なんですよ。わっしょいわっしょいって人を応援していく曲なので。具体的にそういうことが音につながっていくし、やっぱり体が喜びを感じていくしね」