“0から1を作る”信念。指導者37年目で悲願成就。大津で谷口彰悟らを育てた名伯楽・平岡和徳TD が歩んだ道のりと子どもたちへの情熱
次なる目標は選手権初優勝。挑戦はまだ続く
気がつけば大津も高校サッカーを牽引する存在となった。選手個人を見ても、巻誠一郎(06年大会)、植田直通(現・鹿島/18年大会)、谷口彰悟(現シント=トロイデン/22年大会)がワールドカップに出場するなど、多くの選手をプロの世界に送り出す。 14年に総体で準優勝、21年には選手権で準優勝を果たした一方で、日本一にはなかなか届かなかったが、汗を流したのは子どもたちと熊本県のためだった。 これまでの歩みを振り返ると、平岡TDが一貫して持ち続けてきたのは、子どもたちに対する情熱と、“0から1を作る”教育者としての信念だ。 「1を作ってしまえば、才能のある人たちが1を3にしてくれる。たとえば、僕は海外遠征に行く道を作れば、違う学校のサッカー部も行けるようになる。そこから次の人が1から先を作ってくれればいい。誰かが0から1にしないと、ずっと0のままで終わってしまう。自分は何のために熊本に帰ってきたのか。当然選手を育成するためだけど、指導者を育てて熊本を変えていく使命もあった。(立ち上げに関わった)ロアッソ熊本を作った時もそうでしたから」 平岡TDが熊本県に巻いた種は芽を出し、大きな果実となった。50名以上のプロサッカー選手を育ててきただけではなく、数多くのOBが指導者となり、サッカー界以外で活躍する者も多い。山城監督も平岡TDへの想いを口にする。 「(指導者として)大津高校に入るきっかけになったのも、自分の代で選手権に出られずにどうにか平岡先生に恩返ししたいっていう思いがあったからです」 誰からも慕われ、熊本県のために戦ってきた平岡TDの功績は大きい。 「僕にとってのお手本は生徒たち」。辿り着くまでには幾多の困難もあったが、そのたびに子どもたちから多くの事を学んできたからこそ今がある。37年目にして掴んだ初の日本一。家族、恩師、関わってきた人はもちろん、教え子たちとともに進化を続けてきた先に掴んだ栄冠だった。 だが、終わりではない。次なる目標である選手権初優勝に向け、平岡TDは挑戦を続けていく。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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