第5回 早わかりビズ 医師の働き改革と県が抱える医療の課題
ここからは早わかりビズ。りゅうぎん総研の研究員にお越しいただいて、県経済の動きをわかりやすく解説いたします。きょうの担当はりゅうぎん総合研究所、調査研究部研究員の城間櫻(しろま さくら)さんです。よろしくお願いします。 城間 櫻さん「よろしくお願いします」 今回のテーマはこちら。「医師の働き方改革と沖縄県が抱える医療の問題」についてです。城間さん、今回このテーマを選ばれた理由は? 城間 櫻さん「2024年4月に労働基準法が改正され医師にも「時間外労働の上限規制」が適用されました。」「今回は医師の働き方にフォーカスし、改めて県の医療現場か゛抱えている課題を整理しながら、沖縄の医療を存続させるために私たち県民か゛意識すべきことをまとめてみたいと思います」 医師のみなさんに関してはお仕事の特性上時間外労働の捉え方が難しい印象があります。 城間 櫻さん「はい、そうですね。現在、医師の時間外・休日労働の上限は原則で『年間960時間』、条件を満たした場合は最大で『年間1,860時間』となっており他業種の上限である『年間 720 時間』の2.5倍超の時間外・休日労働か゛認められているということになります」 こうしてグラフで比較すると「2.5倍」とは、あらためてすごい数字ですね。医師のみなさん、帰ったらもう寝るだけの生活になっちゃいますね、医師の皆さんの健康が心配になります。 城間 櫻さん「そうでよね、長時間の労働を認める基準になっていることから医師の健康を確保するための2つのルールも定められました。」「ひとつは、退勤から翌日の出勤までに原則9時間を空けるルール『勤務間インターバル制度』そして、2つめは、1か月の時間外・休日労働か゛100時間以上となることが見込まれる場合は面接指導を実施することが義務付けられています」 医師の皆さんが健康に働き続けることのできる環境が整備されつつあるんですね。 城間 櫻さん「はい、しかしこの「働き方改革の新制度」によって目の前の患者さんに向き合う時間を十分に取れなくなることや研究や研修時間の減少、といった懸念も挙げられます。医師本人にとって働きやすい環境になっているのか、現場の医師の声も聞き、継続して制度の見直しを図ることも重要かと考えます」 ほかに、沖縄の医療現場の課題も見えてきましたか? 城間 櫻さん「はい。1つは「医師の偏在」です。沖縄県は医師の総数は全国平均よりやや上回ってはいるのですが、北部や離島地域では医師が少ない所もあり地域での偏りが見られます。また全国と比較しても内科・外科・小児科等の不足状況が深刻です」 「もうひとつは「医療DXの推進」です。これは全国的な課題ですが、医師が専門的な医療行為に注力できるよう医師が自ら作業をする必要のない業務の切り分けや地域・全国の医療機関の連携による業務効率化などの体制づくりを進める必要があると考えます」 では、医療を受ける我々が気をつけることもありますか? 城間 櫻さん「沖縄県の特徴的な課題として、救急医療の受診件数か゛あります都道府県ごとのの救急受診患者数を確認すると、沖縄県の受診患者数か゛突出して高いことは一目て゛わかります気軽に休日・夜間の救急医療を受診することは「コンビニ受診」と呼ばれ、以前から問題視されてきました。 「平日は仕事があるから」や「夜は空いていそう」など自己都合で受診してしまう方が多いのでしょうね。 城間 櫻さん「コンビニ受診は、限られた人員で対応している医師や看護師の負担を増やし、本当に緊急性の高い重症患者の救急受診を阻害する要因となりかねません。また、休日や夜間の受診は待ち時間が長くかかったり、追加費用によって患者自身の窓口負担が増える場合もあり、患者側にもデメリットか出てきます」 安易な救急利用か゛地域の医療体制の崩壊をもたらす恐れもあるということを、今一度、県民全員が認識する必要がありますね。 城間 櫻さん「そして、「健康意識の低さ」も課題の一つです。職場での健康診断において何らかの異常が見つかる「有所見率」をみると年々増加しており、沖縄県は2012年から12年連続で全国最下位となっています」「地域医療体制の維持には、そもそも医療機関にかからない健康づくりが大切です、本当に必要な時に必要な医療を受けられる体制を保つには、県民一人ひとりの健康づくりが欠かせません」 「再検査」や「精密検査」判定をそのままにほったらかしにせずしっかり受診するようにしたいですね。 城間 櫻さん「そうですね。そしてできるだけ、病院へは平日の通常診療時間内に行くようにし、企業側にも通院を理由とした休暇取得への理解が広まってほしいです。また、救急利用に迷った際は【#7119】、小さなお子さんの場合は【#8000】の活用をおすすめします。相談窓口へつながり、夜間や休日でも無料で看護師や医師からのアドバイスを受ける可能です」 城間 櫻さん「地域医療は医師の長時間労働によって支えられてきており、私たちの暮らす沖縄県も例外ではありません。少子高齢化が進むなか、医療ニーズの変化や担い手不足により、医師個人の負担がこれまで以上に増加する恐れがあります。医師の働き方改革を理解し、適切な救急利用や受診を心掛け日頃から健康意識を高く持ち、病気やけがを防ぐことも地域医療を守るうえで必要なのではないでしょうか。」 かつては「平均寿命全国1位」で「長寿県・沖縄」と言われていましたが今では、大幅に悪化しています。これからも必要な時に必要な医療が安心して受けられる沖縄を維持するために、県全体で課題に向き合い続けることが求められますね。 きょうはりゅうぎん総合研究所の城間さんにわかりやすく解説していただきました。ありがとうございました。 城間 櫻さん「ありがとうございました」 ここまでビジネスキャッチーでした。