3千万円、1億円超の高額な新薬 問われる費用対効果と医師の悩み
近年、3000万円、1億円など高額な新薬が次々に登場している。それとともに「国が滅ぶ」という声もあがる。誰に対しても高額薬剤を使うとなれば、社会保障費が増大するためだ。費用対効果について問う声もある。一方、現場の医師からは「高額だから使わないという判断はほとんどない」といった意見も出ている。高額薬剤にどう向き合うべきか。専門家や現場の医師たちを取材した。(ノンフィクションライター・古川雅子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
高額がん治療薬の価格が5分の1に
神奈川県相模原市にある北里大学病院集学的がん診療センターには、最前線の治療を求めて多くの肺がん患者が集まる。 ピンク色のカーテンで仕切られた個別の空間には60床のリクライニングチェアとベッドがある。非小細胞肺がんで抗がん剤「オプジーボ」を使った治療を続けている50代男性は、2週間に一回ここに通う。オプジーボ240mgが入った点滴を静脈から注射で30分かけて体に入れていく。男性は、この1年で治療を20回以上受けている。
オプジーボは、「免疫チェックポイント阻害薬(以下、阻害薬)」の一つ。がん細胞によって抑えられていた免疫機能を再び活性化させる薬で、従来の抗がん剤とは異なるメカニズムで作用する。 肺がん治療の現場にこの薬剤が登場して6年。佐々木治一郎・北里大学病院集学的がん診療センター長は、治療に手応えを感じ始めている。 「抗がん剤のなかには長期に使うと効き目が下がるものもあるのですが、オプジーボでは効き目がずっと維持されるケースが出てきたんですよ。ステージ4の患者さんであっても、薬を投与し続ければ10年間ずっと再発せずに治るような人が出てくるかもしれません」 一方でオプジーボは、高額な薬価も注目されてきた。当初の薬価は100mg(当時の1瓶)で約73万円。その後、大幅に引き下げられ、この8月には当初の5分の1程度、100mg換算で約15万5000円になった。それでも上記の男性の場合、月平均74万4000円かかり、年間約890万円とまだ高価だ。