高速CT型相次ぎ開発…半導体検査装置で攻勢、オムロンの勝算
オムロンが半導体向け検査システムで攻勢に出ている。半導体のハンダ実装の品質を検査するコンピューター断層撮影(CT)型X線自動検査装置を相次ぎ開発。中でも、2024年度内に発売する予定の装置は次世代半導体パッケージ技術「チップレット」に対応し、業界で注目を集める。電子部品を実装するプリント基板向け検査装置で高いシェアを握る同社だが、半導体向けでも存在感を高める。(京都・小野太雅) 【写真】オムロンの複層化した対象物の検査を得意とする「VT-X950」 オムロンの検査システム事業は1987年に始まった。電機メーカーから基板検査を自動化したいとの相談を受け、基板のハンダ付け品質を調べる外観検査装置を開発したのがきっかけだ。そこから、「2000年代のガラケー(従来型携帯電話)の普及を追い風に急成長した」(検査システム事業本部X線検査システム事業部の村上清事業部長)。 その後、電子機器・部品の小型化、複雑化がさらに加速し、ボールグリッドアレイ(BGA)パッケージ基板を採用した下面電極部品などが台頭。従来の外観検査では、ハンダ接合部を検査できないという課題が生じた。 そんな中、同社は08年に高精度かつ高速で、ハンダ品質を3次元(3D)画像から検査できるCT型X線検査装置を発売。旺盛な需要を掴み、ハンダ付け後の基板向けX線自動検査装置で世界シェアの40%以上を獲得した。 同社が半導体市場に照準を定め、開発したCT型X線自動検査装置はパワー半導体向けの「VT―X850」と先端半導体向けの「VT―X950」。2―3年内に2機種で数十億円規模の売り上げを目指している。 中でも24年度発売予定のVT―X950は、機能の異なる半導体チップを組み合わせるチップレットや、チップを垂直方向に積み上げる積層化に対応し、早期の投入に期待が高まる。チップレットや積層化は半導体の面積当たりの性能を高める技術で、難易度が年々高まる半導体の微細化を補完する技術として注目が集まるからだ。 チップレットや積層化で垂直方向にハンダが重なる場合、現在はX線解析装置で数十分かけて不良品を見つけ出す方法が主流。新製品はさまざまな角度から毎秒約720回の速度で撮影する画像を解析し、約30秒でCTスキャンのように検査する。2次元(2D)画像による検査では困難な、複層化した対象物の検査を得意とし、ハンダ内の気泡などを鮮明に確認できる。同社従来機種より分解能を高め、1カ所当たりの検査時間も半減した。 村上事業部長は「CTスキャン方式は(2D画像による検査より)正確に検査できる一方、時間がかかる。ただ、当社製品は世界一速いCTスキャンを実現する」と自信をのぞかせる。PLC(プログラマブルコントローラー)など、オムロンが得意な制御技術を生かし、CT方式でも高速化を実現した。 近年、地政学リスクの高まりを背景に、大手半導体メーカーが新たに生産拠点を整備する際、人件費が高くてもリスクが低い国を選択する動きがある。こうした状況で、高精度な検査を高速で自動化する装置は需要が見込まれる。 調査会社のグローバルインフォメーションは半導体計測検査装置の市場規模が29年に24年比約28%増の134億9000万ドル(約2兆円)に達すると予測する。オムロンは主力の制御機器事業が苦戦する中、半導体向け検査装置の成長を活路の一つにしようとしている。