女性社長就任ラッシュ前夜 ヘッドハンターに聞く人材の多様化
日本の大手企業で女性がトップに就任するケースが目立ってきた。その背景について世界5大エグゼクティブサーチ会社の1つ、米ハイドリック・アンド・ストラグルズの日本法人(東京・港)の渡辺紀子パートナーに聞いた。 【関連画像】東京大学文学部中国文学科を卒業後、1993年豊田通商入社。中国勤務などを経て2011年エグゼクティブサーチ会社、縄文アソシエイツ入社。15年米ハイドリック・アンド・ストラグルズへ。ヘッドハンティング業務に従事し、大企業からオーナー系の中堅企業、成長企業まで幅広くカバーする。(写真:清水 真帆呂) ここ2年ほどで日本の大手企業のトップに女性が就任するケースが目立つようになりました。日本航空の鳥取三津子社長、野村総合研究所の柳沢花芽社長、マネックスグループの清明祐子社長、サントリー食品インターナショナルの小野真紀子社長、MonotaRO(モノタロウ)の田村咲耶社長など枚挙にいとまがありません。 米ハイドリック・アンド・ストラグルズ日本法人の渡辺紀子パートナー(以下、渡辺氏):日本のビジネスシーンとしてかなりエポックメーキング(歴史的転換点)な状況だと見ています。 注目すべきなのは、就任した女性たちのキャリアが多様性に富む点です。生え抜きだけでなく、保守本流ではなかった部署の人が抜てきされたり、コンサルティング会社から招かれたりした人が就任しています。男性トップは一部の例外を除くと大半が生え抜き。女性の方がバラエティーがあり、興味深いと感じています。 なぜ女性トップの抜てきが進むのでしょうか。 渡辺氏:時代が本当に変わり始めました。日本でも株主や世の中の声を重視し始めたということです。例えば顧客企業からヘッドハンティング依頼が来た際に「候補者にできれば女性を入れてほしい」と言われるようになりました。昔なら女性を候補者に入れると「女性登用の可能性は少ないなあ」と言われたものです。 顧客企業の次世代リーダーを誰にするか、当社で役員アセスメント(評価)を引き受けることがあります。そうした時、必ずと言っていいほど女性は入っていますね。 これまで女性活躍と言うとESG(環境・社会・企業統治)や法務部門などの担当役員に就くケースが多い印象でした。比較的時間に融通が利き、子育てしながらでも働きやすい部門が中心だったと思います。 ところが近年は会社の損益に責任を持つような「ビジネスの人」が選ばれています。こうした変化は非常に大きいですよ。それこそ女性の社長が出た会社は、間違いなく女性社員のパフォーマンスが上がります。 女性のグッドリーダーが出てきて「あの人はすてきだよね」と評価され始めると、その背中を目指す女性が増えるためです。女性役員の比率や人数だけを追うより、スターを生んだ方がより効果的ではないかと思います。