女性社長就任ラッシュ前夜 ヘッドハンターに聞く人材の多様化
「女性は優遇されている」と男性社員のモチベーションが下がることはないのでしょうか。 渡辺氏:今リーダーに抜てきされるような女性の中に実力不足の人はいません。「あの人が社長になるなら仕方ない」と納得感があるはずです。むしろ男性の方が「あいつは前社長のお気に入りだから社長になれたんだ」なんて嫉妬もあるでしょう。 社長に引き上げられる際、女性と男性の条件に差はありません。ただ意思決定の方法やリーダーシップのあり方については男女に違いがあると感じています。 日本で役員クラスまで昇進する人はまだほとんど男性です。派閥をつくれるほど女性リーダーには仲間がおらず、それが逆にしがらみにとらわれない経営につながるのではないでしょうか。派閥がないからこそ、性別に関係なく人に好かれる人がリーダーに選ばれます。しなやかと言いますか、従来の型にはまらずバランス感覚に優れた方が就任しているという印象です。 昔、女性が社長になろうと思ったら「男を踏みつけてでも上に行く」的な生き方をしなければいけない雰囲気がありました。しかし今の女性リーダーは違う。「私は女だから」なんて考えず、着々と仕事をしている人がいつの間にかトップに就くという時代になっています。 幹部候補者の女性たちも変わってきました。以前は優秀な人に「10年後くらいに社長を目指してみたらどうですか」と投げかけてみても「自分なんかとんでもない。考えてもいなかった」と答える人がほとんどでした。今はもっと前向きです。 ここ数年間で新しく生まれた女性の社長たちが経営で成果を上げれば、トップを目指す女性が増えそうです。 渡辺氏:メジャーリーグで例えると、今の日本は野茂英雄さんが活躍していた時期に似ています。「世界で通用するはずがない」と思われていた日本人が驚異的な成績を収めました。野茂さんが世界を切り開いてたくさんの後続を生んだように、今は女性たちが大企業のトップを開拓しているのです。 今45歳あたりの世代には、自分もリーダーに挑戦してみたいと考える人がゴロゴロいます。数年後には女性のトップ就任の波が一気に来ると思いますよ。
朝香 湧