歴代政権の「パンドラの箱」 日米地位協定の改定、沖縄で交錯する期待と疑心
石破氏の真意は
日米地位協定の改定について、沖縄県議会では自民も含めた全会派が「必要」との認識で一致している。県は具体的な改定案を盛り込んだ要請書を何度も政府に提出し、全国知事会も18年と20年に地位協定の抜本的な見直しを政府に求めた。だが、そうした訴えに呼応する動きは政府・与党側で広がってこなかった。 それだけに、今回、石破氏が改定に意欲を示していることに、島袋大・自民県連会長は「首相は踏み込んだ動きをしてくれると思う」と期待し、「県連でも首相の目指す改定をベースに議論していきたい」と語る。一方、国政野党側には「沖縄の状況改善に資する改定なのか、確認しなければならない」(仲村未央・立憲民主党県連代表)と、石破氏の真意をいぶかる声もある。 石破氏は衆院選公示前の12日にあった党首討論会でも地位協定の改定について「具体策と合わせてこれから党内で議論する」とした上で、「必ず実現したい」と踏み込んだ。だが、改定には米国側が慎重姿勢を示すのは必至。自民党内の議論も混迷が予想され、実際、今回の公約では、前回21年の衆院選公約と同じ「あるべき姿を目指す」との表記にとどめた。 他の主要政党は公約で、与党の公明党が「あるべき姿を不断に追求する」とし、野党の立憲、日本維新の会、共産党、国民民主党は地位協定の改定や見直しが必要との立場を明記した。
自衛隊目線の改定
著書に「日米地位協定」(中公新書)がある山本章子・琉球大准教授は「(地位協定に付随する)合意議事録の廃棄で解決する問題は多い」と指摘する。 合意議事録は米軍による基地や部隊の運用などを詳しく定めているが、山本氏は「地位協定締結時に交渉当事者間で取り決められたもので、法的な位置付けが曖昧だ」とし、「よりハイレベルな閣僚や首脳級の交渉、政治的な決断によって廃棄できる」と考える。 一方で、石破氏が地位協定改定と関連して米国内に自衛隊の訓練基地を置く構想を示していることに疑問を呈する。「米軍が日本でできていることを自衛隊が米国でできるようにすることで、日米が対等になろうとする自衛隊目線の改定だ。沖縄県や住民が求め続ける基地の負担軽減には結びつかない」【比嘉洋】