医療訴訟の判決での勝訴率はわずか2割…元裁判官が教える「医療紛争の具体的予防策」
「薬」にも落とし穴があるかも
最後に、いくつかの事項を補っておきます。 歯科の医療訴訟は少ないのですが、インプラントについては、細菌感染等の危険性が大きいため、時々あるようです。行う場合には、適切な歯科医院を選択すべきです。 薬剤については、長期連用が危険なものはそこそこあるといわれます。長期にわたって服用する場合には、インターネット等で、副作用や事故例を調べておいたほうがいいでしょう。私の経験でも、この点については、優秀な医師でもあまり気にかけていないことがままあるように思われるからです。 薬害については、たまたま生じたような特異なものは、たとえ重大なものであっても、前記のような立証上の問題が大きく、損害賠償請求の対象にはなりにくいことにも注意してください。 また、薬は相性が大きいので、ほぼ同じ作用をするはずの薬でも、実際の効果は人によってかなり異なることがあります。たとえば、向精神薬はその典型です。したがって、薬があわないと感じる場合には、早めに医師と相談したほうがいいでしょう。 元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治と制度は、こんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は、長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)