冷たく降る雨の裏で、今年もアツいスーパーGTウエットタイヤ戦線。各社の新トレッドパターンがあらわに……ミシュランはGT500席巻したパターンをGT300でテスト
ダンプ路面に強いヨコハマ
ヨコハマは、昨年からちょい濡れ路面を重視したタイヤ開発を進めている。雨量が多いタイミングではやや苦戦しているようにも見受けられるが、ヨコハマとしてはそもそも実際のレースでは雨量が多過ぎると赤旗中断になるケースが多いため、雨量の少ない状況で強いタイヤ開発に注力すべきと考えている。実際、岡山テストでのダンプ路面のセッションでは、ヨコハマユーザーの24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zがトップタイムを記録するなど、確かなパフォーマンスを見せている。 ヨコハマのトレッドパターンは、縦溝をメインに、細かい横溝が入れられたもの。これまではGT500クラスでのみこのパターンが採用されていたが、今回のテストではGT300でもこのパターンがテストされている。 これは実戦での投入を前提とした動きとのことで、通年で1種類と決められているパターンの登録まではまだ猶予があるとはいえ、GT500とGT300のパターンが同じとなる可能性は高そうだ。横浜ゴムのスーパーGTタイヤ開発を率いる白石貴之氏は「よりダンプ路面に注力した方がいいだろうという方向性はGT300も同じ。現状として(GT300の従来パターンが)厳しいわけではないですが、より上を目指す開発をする中で、新しい方が取り分があるなと考えました」と語っていた。
ダンロップもパターンを大幅変更の可能性
そしてダンロップも、従来とは異なるパターンのタイヤが目撃された。新パターンのタイヤは、これまでの左右対称なものから、左右非対称なものに。住友ゴムでスーパーGTタイヤの開発を率いる安田恵直氏は、「昨年から開発していて、ところどころでテストしていました」と話し、さらにもうひとつ新しいパターンがあり、2種類のパターンをテストしていると明かす。 左右非対称の新パターンは、タイヤの内側(車体側)に縦溝が3本入れられており、それ以外は両端に横溝が入れられた、ヨコハマや昨年までのミシュランと似たコンセプトに感じられる。これはダンプ路面を意識したものかと安田氏に問うと、「ダンプ路面での強さも欲しいし、多少水量が多くてもコース上に残れるようなパターンを考えると、ああいう形になりました。弊社にある市販のGT-R用のパターンをベースに、シミュレーションを活用してシフトさせました」との回答だった。 縦溝のあるイン側で排水性能、設置面積の多いアウト側で旋回性能を発揮するというコンセプトだという新パターン。現在はパターンが変わることによるコンパウンドの合わせ込みを探っている状況とのことで、「同じようなパターンだと同じようなコンパウンドでいけますが、例えばもう少し硬いものが使える、もしくは必要になるなど、そういった場合もあります」と安田氏は説明した。
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