埼玉栄高校グラウンドで車横転事故…運転していた生徒は「無免許」といえるのか? 学校の管理責任はどうなる?
●グラウンドは「道路」にあたるのか
小学校の校庭で、貨物自動車を運転した行為につき無免許運転が問題となったケースで、「学童その他一般公衆の多数出入する小学校校庭の如も‥「道路」の中に包含されるものと解するを相当とする」と判示し、有罪としたものがあります(高松高裁昭和27年3月29日判決)。 そうすると、今回のケースも、小学校と高校という違いはあるものの、「高校生その他一般公衆」が多数出入りするものとして、「道路にあたる」といえそうにも思えます。 ただ、先にも書いたように、具体的な事情が異なっている可能性は十分あります。 たとえば、校門が閉鎖され、グラウンドに関係者以外は誰も入れない状況だったとか、グラウンド内で自動車を運転するためには施設管理者による特別な許可が必要だったなどの事情がある場合、「道路」と認定されない可能性も出てくるでしょう。
●学校側の民事上の責任
次に監督やコーチの監督責任も問題となります。まず、埼玉栄高校は私立高校ですので、国家賠償法は適用されません。 担任や部活の顧問などは、民法上の不法行為責任(民法709条)や、安全配慮義務違反(同法415条)による損害賠償責任を負う可能性があります。 学校は、使用者責任(同法715条)を負う可能性があります。 これらの責任を問う際には、教師や学校側に過失があったのかが問題となります。この過失は、生徒を指導・監督し、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務に違反している場合に認められると考えられています(最高裁昭和58年2月28日判決)。 そして、この注意義務が存在するかどうかの判断は、生徒の年齢や発達段階、事故の起こった時間や場所、事故の原因、および、事故の原因となった活動の性質(教育活動じたのか、生徒同士の個人的な関わりの中で生じたのか)などの事情を総合的に考慮して判断すると考えられます。
●運転していた生徒の民事上の責任は?
今回のケースでは、運転していた生徒は高校生と考えられるため、民事上、生徒自身が不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があると考えられます(民法709条)。 反面、被害生徒にも事故発生について落ち度がある場合には、過失相殺といって、損害賠償の額が減らされる可能性があります(同法722条2項)。