埼玉栄高校グラウンドで車横転事故…運転していた生徒は「無免許」といえるのか? 学校の管理責任はどうなる?
●運転免許の必要な「道路」といえるのかどうか
報道によると、運転していた生徒は「無免許過失運転致死」の疑いで事情を聞かれているようです。 生徒らは高校のグラウンドで運転していたようですが、このグラウンドが、運転免許を必要とする「道路」といえるのか、つまり「無免許」だったのか、という点が大きな問題となります。
●運転免許が必要な「道路」とは?
グラウンドが「道路」でなければ、運転免許はいりませんから、「無免許運転」にはなりません。 そして、道路交通法上、運転免許が必要とされる「道路」には、大きく分けると以下の3つの種類があります(道路交通法2条1号参照)。 (1)道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第二条第一項に規定する道路 (2)道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第二条第八項に規定する自動車道 (3)一般交通の用に供するその他の場所 (1)(2)は高速道路や県道・市道、有料道路など、割とわかりやすく決まっているため、主に問題となるのは(3)です。今回のケースでも、この(3)にあたるのかが問題となります。
●「一般交通の用に供するその他の場所」の解釈に関する最高裁判例・高裁・地裁の判例
この定義については、判例・学説上、さまざまな議論がされてきました。 最高裁昭和44年7月11日判決は、「私有地であっても、不特定の人や車が自由に通行できる状態になっている場所は、同法(道路交通法)上の道路であると解すべき」と判示しています。 この判例は、比較的緩やかに道路にあたるという判断をしており、その後も(3)として道路といえるのかは、比較的緩やかに判断されている傾向があります。 ただ、だからといって、いつも「不特定の人が通れるから『道路』にあたる」というような単純な認定がされているというわけではないことには注意が必要です。 「不特定の」人や車が、「自由に通行できる」かどうかは、事案ごとに具体的に検討する必要があります。具体的には、その場所の道路としての形態、通行の状況、場合によっては管理者の意思や、各法律の適用の是非まで加味して検討されます。 このような具体的事情を検討した結果、「道路」にはあたらないとされているケースもあります。 たとえば、最高裁昭和46年10月27日決定は、無料駐車場内の事故で、駐車場の中央部分について、傍論部分ではありますが「道路」であることを否定しています。 また、作業員のほかは通行する人・車のない採石作業内の道は「道路」にあたらないとするもの(福岡地裁直方支部昭和41年7月22日判決)や、立ち入りに許可が必要な団体の業務所構内(仙台高裁昭和38年12月23日判決)などで、「道路」にあたらないという判断がされていることにも注意が必要です。