未来志向でクリエイティブな遺跡保全 ウズベキスタンが国際会議で発信
遺跡保全としてのアーティストレジデンシーとは
WCCEでは昨年オープンしたばかりの「中央アジアエキスポ・ウズベキスタン」(CAEx Uzbekistan)を会場に、80カ国から2000人のクリエイターや各分野でのリーダーが集まり、ウズベキスタンの最前線で働く人々を交えながら、多くのパネルディスカッションが行われた。 その中でも印象的だったのが、今回のWCCEのホストにもなったACDF芸術文化開発財団が音頭をとり、ウズベキスタンが未来志向の遺跡保全として、アーティストレジデンシーに取り組もうとしていることだ。 アーティストに滞在してもらい、そこで創作をしてもらうことで、土地の風土にインスピレーションを得たアートが生まれるのみならず、地域との交流を通して、アートという文化が地域に根ざすのがアーティストレジデンスのメリット。カンファレンスでも、海外のアーティストレジデンシー成功事例として、ドバイ文化局長のハラ・バドリ閣下から、1996年にアル・クオズ地区でスタートしたクリエイティブセンターの建設に始まるドバイの事例が語られた。 ACDF芸術文化開発財団の代表、ガヤネ・ウメロバさんによると、ACDF芸術文化開発財団が創設されたのは2017年。具体的なアートレジデンシーのプロジェクトは、官民半々の出資で生み出されている。 税金を使うことに関しては、「未来の子供達のためになる」と、国民の合意が得られ、残り半分のウズベキスタン内からの民間投資は、投資額を無税にすることで呼び込めたという。プロジェクトが成功すれば、今後この手法を海外に輸出することも考えている。 各テーマでのパネルディスカッションが行われた翌日、筆者は今回の選考委員となった世界各国からのアート関係者と共に、実際のアーティストレジデンシーの会場となる遺跡、マトカリンボイ・マドラサ(イスラム神学校)のあるナムナ地区に向かった。 ユネスコの世界文化遺産暫定リストにも登録されているマドラサの再建には、スイスを拠点とするアガ・カン・ディベロップメント・ネットワークと協働。アフガニスタンで20年以上遺跡の再建に関わってきたアフガニスタン人のアジマル・マイウンディ・フィルマさんがプロジェクトリーダーとなり、アフガニスタン人の6人の職人を招聘して今回のプロジェクトに取り組んだ。