【独自解説】なぜ未解決?男が関与ほのめかした17年前の未解決事件「加古川女児刺殺」捜査難航のワケ 手がかりは女児が残した「大人の男の人」
一方で、現場周辺は住宅が点在していて、人通りがないわけではない。 ただ、細い路地が多く、入り組んでいて、私も取材で歩いていると迷ってしまうことがあった。土地鑑のない人が通るような道には思えなかったし、見知らぬ人が歩いていたら、住民の目に留まってもおかしくないと思われた。
また、現場から数十メートル西には幹線道路が走っている。午後6時ごろは、帰宅の時間帯で交通量は多い。 にもかかわらず、手がかりとなる目撃情報はあがってこず、捜査幹部はよく「モク(=目撃情報)がない」とこぼしていた。防犯カメラも、当時は今ほど普及していなかったし、画質も悪かった。
■捜査難航のワケ②物証がない
次に、犯人の特定につながるような物証も出てこなかった。 犯行に使われた凶器の刃物は見つかっていない。血痕も、女児が倒れていた自宅の玄関先には血だまりができていたが、周辺の道路からは見つからなかった。 凶器には血が付くので、血痕が検出されれば、そこから犯人の逃走経路がわかる可能性があるが、可視血痕は見つからなかった。
■捜査難航のワケ③動機がない
通常の事件では、犯行の状況や被害者の周辺の捜査で、犯人像や動機が浮かび上がってくることが多い。 被害者の金品がなくなっていれば「金銭目的」。被害者に人間関係のトラブルがあれば「怨恨」の線が考えられる。
■なぜ子ども? なぜ自宅前で? 不可解な犯行と見えない犯人像
しかし、被害者は7歳の子ども。金銭目的はもちろんのこと、人に恨まれるようなトラブルは考えにくい。 家族に対する恨みは考えられなくはないが、それであれば、わざわざ家族に顔を見られる恐れのある自宅の前で犯行に及ぶだろうか? 一方、犯行の状況は、刃物で女児の胸を突き刺すという残忍かつ非道なもので、犯人の強い殺意がうかがえる。 当時の取材メモを開くと、捜査幹部の見立ては早い段階から、被害者とは面識のない人物による犯行、いわゆる「流し」に傾いていた。 私もいくら取材を重ねても、犯人像は見えてこないままだった。