J1京都サンガ「拠点」移転に最大の壁 市長選公約、スタジアム2倍超の土地どう確保?
サッカーJ1京都サンガFCの練習場などクラブ施設を京都府亀岡市に誘致しようと、市と亀岡商工会議所が候補地の公募に乗り出した。運営会社「京都パープルサンガ」と共に、本拠地・サンガスタジアム京セラと合わせた拠点「サンガタウン」化を目指す。拠点の一元化のため、スタジアムの2倍超の広さの用地が必要といい、長期構想への第一ハードルとなる。 【写真】スタジアムの大きさがわかる全景写真 「サッカーの聖地としてまちのアイデンティティーが高まる」「スポーツ&ウェルネスの発信源になる」「練習見学者や施設利用者で、にぎわいや活力を生み出す」-。 用地公募の告知には、市民や事業者に向けて効果が列挙された。サッカーがまちの魅力を高めるコンテンツになるという、市が描く理想像だ。 誘致の発端は、桂川孝裕市長が昨年10月の市長選で掲げた公約だ。桂川市長は「365日サンガを応援する人が訪れるようになる」と経済効果を期待し、「全国に20チームしかないJ1チームの拠点になれば、亀岡の知名度が上がり、市民がより誇りを持てるようになる」と強調する。 現在の練習場は城陽市の北中部にあり、1998年に開設された。サンガによると、クラブハウスなどが老朽化し抜本的な改修に迫られている。鉄道駅から遠く、来場者用の駐車場がないといった課題も抱える。 地域の活力創出の起爆剤にしたい亀岡市。スタジアムとクラブ施設を一体的に運営し、チームの強化やファン拡大につなげたいサンガ。移転構想への動きは、2者の思惑が一致した形だ。 候補地の条件は、敷地面積が約7万平方メートル。スタジアム(約3・3万平方メートル)の約2・1個分の広さに相当する。 買収価格は全体で2億円程度、1平方メートルあたり3千円を想定する。要項ではサンガなど民間企業が買い取るとしているが、桂川市長は「(経費捻出のため)企業版ふるさと納税の活用も考えている」と語る。 市幹部によると、公募前に庁内でも複数の候補地を挙げて、実現性を検討していた。だが、取得費や利便性などの問題でめぼしい場所が定まらず、募集に踏み切ったという。 市有地や市街地はまとまった用地が確保できず、丘陵地は整地に膨大な経費が必要になる。整備手法について市は「市街化調整区域の農地に、開発許可制度の適用を想定している」と説明する。 ただ、市内の農地は2000年度以降、計1085万平方メートルで、国事業の再編が進められている。ある農業関係者は「国の補助金が入った農地をつぶすのは難しい。そもそも、土地を売ろうと思う人がどれほどいるのか」と指摘する。 応募があった場合、府や府サッカー協会も交えて、実現可能性を検討する。法的に開発が可能かどうかや、採算性も考慮しなければならない。市幹部は「利便性や整備費、経営面で、城陽での改修を上回るメリットがある用地が見つかるかどうかが鍵になる」と話す。