歯の根管治療は実は1~2回で終われるってホント? 中断すると歯を失うリスクも…
根管治療で「間隔が空く」「途中で中断する」と、どんな影響・リスクがある?
編集部: 根管治療で通院の間隔が空いてしまうと治療にどのような影響がありますか? 髙井先生: 治療の間隔が通常より長くなると、治りが悪くなったり、痛みや腫れがでたりする可能性があります。根管治療では、根管内を清掃・消毒をして細菌の増殖を抑えていきますが、その間は簡易的な蓋(仮封)をして薬剤を作用させていきます。 この蓋の封鎖効果は3週間程度といわれており、それ以上長い期間を空けてしまうと蓋の効果が落ちて根管内に細菌が入り込み、感染が広がりやすくなります。 編集部: そうすると、次回の来院は遅くても3週間以内に行くのがベストなわけですね。 髙井先生: 1~2週間程度であれば基本的に問題ありませんが、それ以上空いてしまうと先述のようなリスクが高くなるため注意が必要です。 一方で、長期の出張や旅行など、あらかじめ通院できないことがわかっている場合は、その旨を歯科医に伝えておけば、頑丈な蓋に変えるなどの対応が可能です。 したがって、事前に1ヶ月ほど通えない時期がわかっている場合は、早めにそのことを歯科医に相談しておきましょう。 編集部: 歯医者さんに相談せずに、勝手に治療を中断してしまうとどのようなリスクがありますか? 髙井先生: 最後の治療から3ヶ月、半年と経ってくると、蓋はほとんど取れて根管の中は汚れが詰まった状態になります。そうすると、仮に治療をスタートした時点で歯が残せる状態であっても、その間に中でむし歯が大きく広がって、最悪の場合、歯が残せなくなる恐れがあります。 編集部: 自己判断で治療を中断した結果、歯を失う可能性もあるわけですね。 髙井先生: はい。とくに、根管治療の場合は「痛みがなくなったから通院をやめる」というケースも少なくありません。しかし、痛みが引いても治ったわけではないので、最後まで根気強く通っていただきたいと思います。
違和感や痛みが引かず、根管治療が終わらない…こんな時、どうする?
編集部: 根管治療中に痛みや腫れが長引く場合、治療期間に影響はありますか? 髙井先生: 「痛みが引かないから根の治療が終わらない」とよく言われますが、根管治療に精通している歯科医の観点でいうと、これは誤りであるといっていいと思います。 根管治療はできる限りのことを1回もしくは2回で終了し、根管を完全に封鎖してから痛みや腫れなどの症状が落ち着くのを待つのが現在の正しい考え方です。 したがって、痛みや腫れがあるから何回も治療や通院が必要というのは、学術的にみても正しい判断とはいえません。 編集部: 痛みや腫れがあるからといって、根管治療に5回も6回もかけるのはあまり意味がないということでしょうか? 髙井先生: これは治療環境や設備、歯科医の技術にもよりますが、何回も治療を繰り返したり、薬を交換したりすることにポジティブな影響はないといわれています。つまり、根管治療は「治療回数を増やせば治る」というものではないということです。 むしろ、治療回数が増えると外から菌が入ってくるリスクが高くなるので、基本的に回数を増やすことにメリットはないと考えます。 編集部: では、根管治療が長引いてなかなか終わらない場合はどうしたらよいでしょうか? 髙井先生: 治療に数ヶ月かかっている場合は、根管治療に精通した歯科医に相談してみるのも方法の1つだと思います。その目安として、「日本歯内療法学会」という根管治療を専門とした学会認定の専門医であれば、一定の治療の質は担保できるでしょう。 すでに根管治療に5回、10回と回数を重ねているようであれば、ぜひこのような専門医に一度ご相談いただければと思います。 編集部: 最後に、読者へメッセージをお願いします。 髙井先生: 根管治療に関しては、「すごく期間と回数がかかって通院も大変」というイメージをお持ちの患者さんが非常に多いと思います。ただ、先述のように、根管治療は回数をかければ治るというものではないですし、適切な治療を行えば通常は1~3回で終了します。 したがって、あまりにも治療が長引く、回数が多い場合は担当医に一度相談してみるか、もしくは根管治療に精通した歯科医のセカンドオピニオンを受けてみることをおすすめします。