不安で眠れず夜中の3時に素振り・張本勲さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(34)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第34回は張本勲さん。言わずと知れた3085安打の最多記録保持者は持論をたっぷりと語ってくれました。球界のご意見番の口からは、現役選手には耳の痛い話も次々と飛び出しました。(共同通信=中西利夫) メジャーで「クレイジー!」と言われた昔気質のトレーニング方法、「大魔神」佐々木主浩さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(21)
▽肝心なことは同僚でも絶対に教えない プロ初打席は阪急の米田哲也さんに3球三振。(対策を)毒島章一さんに聞きましたよ。同じ左で3割バッター。東映のキャプテンだし、人格者でもあって。何を狙ったらいいですかと聞いたら「カウントを取りにくるカーブを必ず投げてくるから、それを狙え」。1球目、速くてびっくりしましたね。ひょっとしたら2球目はカーブ?と思ったら真っすぐ。振り遅れてかすりもしない。3球目も同じ球。岩本義行監督は広島県の同郷です。「何を狙うとんや」「カーブですけど…」「ばかたれ!」。頭、ゴーンですよ。「このピッチャーは100球投げたら98球は真っすぐや。誰がそんなこと言っとんか」。あの人(毒島さん)と言えないじゃないですか。腹も立ちませんでしたよ。そうか、こういう世界かと。そら教えないわね。何年もかかって会得したものを昨日今日入った若造に教えるわけない。それなら、この人よりうまくなってやろうという気持ちになったんです。
新聞紙上ではきれいごとを言ってるけど、プロは教えませんよ。私も投手の癖を何人も見破っているけど、絶対教えない。巨人に行った時も若いやつが教えてくれと来ましたよ。「目玉むいて、しっかりボール見ろ。最後まで振り切れ」。当たり前のことしか言いませんよ。ステップが悪いとかバットの構え方が悪いとか、肝心なことは教えないです。まあ、ライバルですからね。その人が幸せになったら、こっちは不幸になる。同僚でも技術のやりとりはないですね。どっちかは不幸になるもの。それがプロじゃないですか。それでも勝利に向かっていくからプロの集団だと思いますよ。同じチームでも仲良くならないのに、相手チームの投手と、こっちの打者が仲良くなることなんか絶対あり得ないです。田淵幸一と星野仙一は大学時代から仲が良かった? あり得るとしたら、言葉は悪いけど片方はアホ、もう片方は演技しているか、うまく付き合いたいから。どっちかじゃないですか。