まるで月面のような冬の阿蘇・高岳を登る
ダイナミックな山岳景観で知られる阿蘇は世界的にも有名な観光地でもあり、登山をする人なら誰しも一度は登りたいと思う山でしょう。 初夏、九州の山域でしか見ることができないミヤマキリシマが咲き乱れるころが、最も華やぐ季節なのですが、静けさを取り戻した冬の登山も私は好きです。 大きな火口が並び、月面のクレーターを思わせる荒涼とした景色のなか、空気が澄んだ冬であれば、九州の端から端まで見渡せるような眺望の展望台となります。
アクセスは、阿蘇駅から阿蘇山上ターミナルまでバスも運行していますが、山に登るのには車で行くほうが便利です。 山上ターミナル前の広い駐車場に停めたら、阿蘇山公園道路を砂千里ヶ浜入り口まで歩きます。時間に余裕がない方は、阿蘇山公園道路(有料)を通って砂千里ヶ浜駐車場に駐車することもできます。
公園道路の登り坂で体も温まり、いよいよ砂千里コースに入ります。木道に沿って進むと、砂千里を挟んで第四火口とその奥には中岳の巨大な火口壁の連なりが迫ってきます。 砂千里の東の端まで来ると、本当にここを登るのか?と思うほどの赤茶けた溶岩壁の急坂が目前に迫ります。足場が悪い急坂をゆっくりと慎重に南岳へ向かって登っていきます。 息を切らせながら南岳の取付まで登ると、幾層にも積み重なった稜線の地層が阿蘇山は成層火山であることを教えてくれます。稜線の道は緩やかに上下しながら中岳まで続いています。風向きによっては火山ガスが流れてくることがあり、卵が腐ったような匂いがしたり、喉が痛くなったりすると要注意です。タオルで鼻や口を覆って引き返しましょう。この日は、かすかに鼻をつくようなにおいがあったので、マスクをして中岳へ向かいました。
中岳は、噴煙を上げる第一火口を見下ろせる場所で、クレーターの展望台のような山頂です。ここまで来れば北風の厳しさは増しても、火山ガスの影響は少なくなります。 強風を避ける場所がない高岳には帰り道に立ち寄ることにして、大鍋と呼ばれる火口跡へ下り、避難小屋の月見小屋で昼食を取ることにしました。 月見小屋という名前に惹かれてなのか、この場所で宿泊やテント泊の登山者がいるようですが、国立公園内なので指定地以外では原則テント設営はNGです。 食事を終え、高岳東峰へ向かいました。ここからは、崩壊が進み、特異な山容の根子岳が間近に迫ります。 すぐ西には溶岩隆起でできた「天狗の舞台」があります。ここに立つ登山者を遠くから見ると、舞台に立つ演者のように見えます。