「正直、外国人客の接客は面倒くさい…」インバウンド急増に混乱する現場のホンネ…急増する外国人訪日客に「おもてなし」が不要であるワケ
インバウンド対策のために外国人スタッフを増やすというのは、そうたやすいことではないのだ。 ■日本ならではの「あいまいな言い方」がネック 現実的な方法は、やはり2の多言語翻訳ツールを活用することだろう。接客で使える安価なものとしては、Google翻訳やポケトークあたりが有名だ。 多言語翻訳ツールの活用については、簡単な情報を伝えるだけならこれで事足りるだろう。ただその精度には限界があり、込み入った内容や専門性の高い情報を伝える際には、まだ誤訳が生じる可能性がある。とくに接客の場面では、クロージングに至るまで客との間で押し引きのあるやり取りをする必要がある。
先述の女性の発言にもあったとおり、多言語翻訳ツールを使っても、普段と同じようには接客できないことが多い。 さらに付言すると、販売員は断定的な表現を避けたり、文脈で判断させる表現を使うクセがあるため、正しく翻訳されない場合がある。たとえば次のような表現が、その代表例だ。 お客様:「ほかに似たような色で、もう少しフォーマルなコートってありますか?」 販売員:「そうですねえ、似たようなお色でフォーマルなコートですと、いま店内にあるものではちょっと……」
こういったあいまいな言い方をされると、さすがのAIも正しく翻訳できない。いまの段階では、多言語翻訳ツールを活用しても、日本的な接客のニュアンスを完全に再現するのは難しいのだ。 ■そもそも「おもてなし」を求めていない ではどうしたらいいか。方向性として、私は過剰なおもてなしを見直すことがベターであると考える。 おもてなしにはいろいろな定義があるが、「相手のニーズを的確に把握して、期待を上回る対応をする」という説明で大きく間違っていないだろう。こうした対応は最小限にとどめ、できるだけシンプルでストレートな接客を心がけるのだ。
そもそもおもてなしを成立させるには、必要不可欠な前提がある。それは、相手のニーズを正しく把握していることだ。この点、相手と言葉や文化の壁がないスタッフが揃っているのなら、いまやっているおもてなしを追求していいかもしれない。 だが、一般的な日本人スタッフが、言葉が通じないうえにどんなニーズを持っているかわからない外国人客に、期待を上回る対応をするのは限界があるだろう。 また、そもそも外国人客は、必ずしも販売員におもてなしを求めているわけではない。