「正直、外国人客の接客は面倒くさい…」インバウンド急増に混乱する現場のホンネ…急増する外国人訪日客に「おもてなし」が不要であるワケ
あと、外国人を前にすると、やたら緊張するんですよね。接客らしいことなんて、ほとんどできていないと思います。『これください』と言われた商品の会計と包装をするだけで精一杯です。本当は、関連の商品をいろいろ紹介できたほうがいいんでしょうけど……」 ■「言葉の壁」は現時点で完全には解消できない このように、外国人客に対する準備が整っておらず、その場しのぎの受け身の対応をしている現場は多い。そして、勝手がわからず右往左往しているうちに外国人客がさらに増え、ますます対応が難しくなっているのが実情だ。
将来的にはAI技術の進化によって、こうした問題はほぼ解消されるだろう。おそらくAIを搭載したロボットやタブレット端末が、相手の言葉でパーソナライズされた接客をする姿が一般的になるはずだ。その意味で、人が関わる応対が必要とされる場面は、これから次第に減っていくのは間違いない。 ただ、それはあくまで将来の話だ。問題解決の時間軸が違う。まずは、いま目の前に押し寄せている外国人客に、現場のスタッフがどう対応していくべきか考える必要がある。
現状、対面販売のコミュニケーションにおいて、言葉の壁を解消するためにすぐにできる方法としては2つある。 1: 日本語以外の言語で対応できるスタッフを増やす 2: 多言語翻訳ツールを活用する このうち1に関しては、「言語ができるスタッフを揃えられるなら、はなから苦労しない」(前出の男性談)というのが多くの現場の実情だろう。流通小売業では多くの企業が慢性的な人手不足に陥っている。言語が堪能な人材を、これから大幅に増やしていくのは現実的ではない。
とくに外国人スタッフの場合は、日本人以上に教育に時間がかかる点もネックとなる。日本特有のコミュニケーションスタイルやおもてなし文化を理解するまでに、ある程度の時間が必要だからだ。 外国人人材を小売業に派遣する会社を経営する知人に聞くと、「母国でどれだけ良いサービスを受けてきたか」で習熟のスピードがずいぶん違ってくるそうだ。 そして、「サービスレベルが日本と比較的近い東アジアの国と比べると、最近増えているネパールやフィリピン、ミャンマーといった国出身の人材は、育成に時間がかかることが多い」という。