「患者の痛みがわかるようになった」感染症医・岡秀昭が難病患者になって見えたもの
──働き方も変わりましたか。 「以前は自らを犠牲にして働くことが医師の務めと思っていましたが、ワーク・ライフ・バランスを考えるようになりました。自分だけではなく、他のスタッフにもそう言っています。自分の生活や自分の健康が犠牲になった場合に、患者さんの健康や幸せに貢献できるのかと。難病になってから本格的にフライフィッシングを始めました。釣りをしている間は痛みを少し忘れることができます」 ──趣味の時間をもつようになったんですね。 「毎日片道2時間の通勤に耐えられなくなってきたので、具合の悪いときは、病院の近くに借りたワンルームマンションに寝泊まりしています。そこには、フライフィッシングの道具とこだわりのコーヒーをそろえています。痛みで眠れないとき、フライの毛針を作って夜を明かすときもあります。自然には癒やしの効果があるとも感じているので、難病や脳梗塞など大病を患っている人のアウトドアのサポートなんかも、今後ボランティアでやっていきたいとも考えています」
■岡秀昭(おか・ひであき) 1975年、東京都生まれ。感染症専門医、総合内科専門医、医学博士。2020年7月より埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科教授。著書に『感染症プラチナマニュアル』、『Dr.岡の感染症ディスカバリーレクチャー 新型コロナウイルス COVID-19特講2021』など。 ------ 河合香織(かわい・かおり) ノンフィクション作家。1974年生まれ。神戸市外国語大学卒業。2009年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で2019年、第50回大宅壮一ノンフィクション賞、第18回新潮ドキュメント賞受賞。近著に『分水嶺―ドキュメントコロナ対策専門家会議』。