次期代表監督と言われるアギーレ氏の目指すサッカーとは
■弱者を率いるのに最も適した指揮官 それまで1部と2部を往復していたオサスナを1部に定着させ、チーム最高位タイの4位に躍進させた2005‐06年シーズンが、現時点ではアギーレ氏の監督としてのハイライトとなるだろう。決して恵まれているとは言えない戦力をやり繰りし、堅い守備からの速攻に勝機を見出す。弱者を率いるのに最も適した指揮官と言えるし、同じ手法は突出したスター選手が不在のメキシコ代表においても効果を発揮したことは容易に察することができる。 アギーレ氏はいわゆる「身の丈」にあったスタイルを身上としていて、前線からの激しいプレスと攻守の素早い切り替え、そこから繰り出されるショートカウンターはブラジル大会で躍進したチリ代表やメキシコ代表が展開したスタイルでもある。ブラジルの地で脆さをさらけ出した日本代表に欠けていた要素でもあるが、日本サッカー協会が唱える新監督像、ザッケローニ前監督のスタイルを継承・発展させていく指揮官かと問われれば、大きな隔たりがあると言わざるを得ない。 ブラジル大会までの4年間で培われた戦い方に“アギーレ・スタイル”を融合させて引き出しを増やすのか、まったく異なるスタイルを一から組み立てていくのか。理想は前者となるが、そのためにはアギーレ氏が寛容かつ柔軟な性格を持ち合わせ、日本の強化の歴史を理解してくれる人物であることが必須となる。 ■“ザックタイプ”よりは“トルシエタイプ” その点について、イリバレン氏は心配無用を強調する。「スペインは都市ごとに歴史や文化が大きく異なるが、彼はその時々でそれらに適応し、積極的に学ぶことで新しい環境に馴染む姿勢を常に貫いてきた。彼の両親がバスク人であることも、影響しているのかもしれない。性格的にはラテン系で明るく、冗談をよく言っては周囲を笑わせる。ベンチでもロッカールームでも、まさにボスというたたずまいを見せる。もし日本に行ったとしても、自らすすんで新しい楽しみや文化を見つけることだろう」。