次期代表監督と言われるアギーレ氏の目指すサッカーとは
全国紙『アス』で長くエスパニョールを担当するイバン・モレーロ記者の目にも、今年5月まで2シーズンに渡ってチームを率いたアギーレ氏の戦術は「守備的だった」と映っている。「これは監督の嗜好が表れるのと同時に、クラブが所有している選手のレベルにも大きく影響されると言っていい。際立った戦術ではないものの、決して悪いとも言えなかった。財政的に厳しい情勢が続いてきた中で、13位、14位とそれなりの結果を残したとは思っている」。 ■攻撃のキーマンは“ワントップ” エスパニョールにおけるシステムは「4‐2‐3‐1」を基本としたが、アルゼンチン人のマウリシオ・ポチェッティーノ前監督(現トッテナム・ホットスパー監督)が中盤の両サイドにスピードとテクニックに長けた選手を配置したのに対し、アギーレ氏は何よりも守備力を求めた。 攻撃の起点にしてゴールゲッターの役割をも託したのが、ワントップに配置されたFWセルヒオ・ガルシアだった。バルセロナの下部組織出身で、スペイン黄金時代の幕開けを告げたユーロ2008の代表にも名前を連ねたガルシアを生かすための戦い方をアギーレ氏は徹底したと、モレーロ記者は振り返る。 「ガルシアを生かすために、2列目の右サイドにはフィジカルに長けたクリスティアン・ストゥアニ、左サイドには守備力に加えてテクニックも併せ持つシモン・サブローザを配置することが多かった。攻撃のパターンはゴールキーパーを含めた最終ラインからロングボールをまずストゥアニへ入れ、こぼれ球をガルシアが拾って1対1を仕掛ける。突破できればフィニッシュまで持っていき、そうでない場合には相手を引きつけてからラストパスを供給する。もうひとつはシモンが左サイドからクロスを入れ、ガルシアあるいはストゥアニが合わせるパターン。必然的にガルシア、ストゥアニ、シモンの3人は近い距離でプレーすることを要求された。ボールをキープするときはトップ下のアブラハム・ゴンザレス、守備的MFのビクトール・サンチェスがパス回しに絡む。サンチェスとコンビを組むダビド・ロペスはボール奪取力に長けていて、相手ボールのときは2列目の3人も守備に回る。もっとも自陣深くに引くのではなく、守備的MFの2人も含めて、果敢に相手ボールを奪いにいくことを要求されていた」。