意外と見えない「フェンス越しの人」。|長山先生の「危険予知」よもやま話 第27回
世の中には安全に無関心な人もいる!?
編集部:安全態度ですか? 長山先生:そうです。世の中には安全態度を持つ人とそうでない人がいます。簡単に言うと、安全に対して意識がある人と、無関心な人です。安全態度を持つ人なら、手前の「歩行者注意」の看板にも気づいて、「ひょっとすると右のフェンスの陰から歩行者が出てくるかもしれない」という意識を持ちますが、安全に対して無関心な人だと、およそ歩行者のことなど考えもせず、速度も落とさずに運転をするでしょう。 編集部:たしかにそうかもしれませんが、まったく安全に無関心な人などいるのでしょうか? 長山先生:もちろん、人が本来持っている防衛本能のような安全意識は誰にでもありますが、交通安全に関する安全意識についてはかなり個人差があり、まったく安全を意識しないで行動する人も少なくありません。今回の場面では、渡り終える人は見ていても、その他に人影がなかったら気楽にそのままの速度で走ってしまうので、陰から人が出てきても回避できず、はねてしまうことになりかねません。 編集部:安全意識は、“ヒヤリハット体験”などを経験することで高くなるのでしょうか? 長山先生:そういった経験は重要ですが、ただ経験するだけでは安全意識は高くなりません。ヒヤリとした体験を思い返し、なぜ危険な状況になったのか、どうしたらそれを避けられたのかなど、しっかり考えてそれを蓄積することが大切です。そうすると、別の場所で同じような「歩行者注意」の看板を見つけた場合でも、「見えにくい所から歩行者が現れるかもしれないぞ」という危険予知につながってくるものです。今回の危険予知の問題を学習することで、運転中に「歩行者注意」の看板があれば、「見えにくいこの場所では気をつけなければならない」との安全態度が形成されて、危険予知の基盤が形成されます。 編集部:なるほど。“ヒヤリハット体験”から状況に則した危険を予測できるようになり、その結果、減速して注意して見るといった安全行動が取れるようになるのですね。どんなことも経験が重要になるのですね。 長山先生:そうです。経験と言えば、以前、スイスでアウトバーンを利用した際に料金を多めに取られたことがありました。