意外と見えない「フェンス越しの人」。|長山先生の「危険予知」よもやま話 第27回
高速利用者は案内標識ばかり見てしまいがち!
長山先生:そうです。今回のように高速道路に乗ろうとしていれば、案内標識を見ながら走るでしょう。 編集部:問題場面の前方に見える緑色の案内標識ですね。でも、その前に横断歩道を渡っている歩行者がいるので、まずそちらを注意するのではないでしょうか? 長山先生:たしかに前方には横断歩道を渡る歩行者が見えますが、この歩行者はすでに渡り終えるタイミングなので、ドライバーはそれほど意識していないでしょう。右側にも少し注意するものの、チラッと見ただけでは、フェンス越しの歩行者には気づかない可能性が高くなります。その結果、案内標識が注意の焦点になるのです。 編集部:初めて通る交差点だったら、なおさらでしょうね。 長山先生:そのとおりです。案内標識に書かれた「四つ木入口」から乗るのが初めてのドライバーであれば、自分の行く先によって右側の「銀座 東北道」方面なのか、左側の「空港中央 東関東道」方面なのか、どちらに向かえばよいのかを確かめようと案内標識に目線が向いてしまいます。 編集部:交差点までの距離が短いので、慌てそうですね。もし左側に進む必要があれば、すぐ左側に進路変更する必要もありますから。 長山先生:そうです。しかもそれを確かめるために数秒はかかり、その間、他のものは目に入らない脇見の状態となってしまうでしょう。 編集部:知らない道を走るということは、注意がそちらに偏ってしまい、かなり危険なのですね。ナビを設定していれば、だいぶ違うのでしょうか? 長山先生:ナビを設定していれば、案内標識をじっと見る必要はないので、そちらに脇見する危険性は低いですね。ただ、ナビの案内に耳を傾けたり、ナビの画面でルートを確認することはあるので、脇見の危険性がまったくないわけではありません。また、これはどんなドライバーにも言えることですが、交差点までの距離が近いので、信号が変わるタイミングなども気になる点でしょう。 編集部:やはり、そこを走り慣れている人がもっとも安全に走れるのでしょうね? 長山先生:基本的にはそうですが、必ずしもそうではありません。今回の場所には、「歩行者注意」の看板が多数設置されているので、どんなドライバーでも左右から横断してくる歩行者や自転車へ注意すると思われますが、そんな注意看板がなく、歩行者がほとんど通行しない地域ですと、たとえ横断歩道があっても横断歩行者のことをあまり考えないでしょう。 編集部:「渡る人なんかいないだろう」と無意識のうちに思い込んでしまうのですね。 長山先生:そうです。ただ、そう考えるかどうかは、その人に安全態度(Safety Mind)があるかどうかで変わってきます。